第1章 症状による診断へのアプローチ

(C) 医療研修推進財団
体重減少,体重増加
研修必須事項

体重の増減に関して,現病歴と身体所見をしっかりとる.
体重の減少は,エネルギー消費の増加か,もしくはエネルギー摂取の低下かを判断する.
また,体重の増加は,脂肪過多か,もしくは水分過多かを判断する.
体重の増減にかかわる内分泌疾患(甲状腺,下垂体,副腎)は,疑わないと診断が困難であることを認識する.
体重の変化については,原因が特定できない場合でも,その後の経過を追うことが重要である.



  〔体重の増減に関する基礎知識〕   〔体重の増減に対するワークアップ〕
           

  体重の増減に関する基礎知識

1. 食欲は,視床下部の満腹中枢と摂食中枢において制御されている.
2. 脂肪細胞で産生され,分泌される「レプチン」が発見され,満腹物質としての機能とエネルギー消費作用を合わせ持つことがわかってきた.
3. 弓状核は,摂食促進物質のneuropeptide-Y(NPY)を産生する部位である.
4. レプチンは,弓状核のレプチン受容体を介し,NPYを抑制することにより,摂食を抑制的に調節している.
5. 末梢におけるエネルギー消費系としては,褐色脂肪組織に存在するuncoupling proteinが重要である.
6. uncoupling proteinは,体温の恒常性の維持のために,熱産生や,熱放散を行っている.
7. 褐色脂肪組織は,β3-アドレナリン受容体を介して,交感神経の支配を受けている.
8. レプチンや甲状腺ホルモンは,褐色脂肪組織や筋肉のuncoupling proteinの発現を増加させる.
           
〔体重の増減に関する基礎知識〕 〔体重の増減に対するワークアップ〕
ページトップへ戻る 先頭へ戻る


  体重の増減に対するワークアップ

1. 体重減少(表,図1)
 
まず,エネルギ−消費(あるいは喪失)の増加なのか, 摂食の低下なのかを判断する (いつごろからどのくらい減少したのか).
エネルギー消費(あるいは喪失)の増加であれば,運動過多, 甲状腺機能亢進症 (発汗, 下痢),尿糖を伴う 糖尿病, 腸管からの吸収不良(アルコールによる 慢性膵炎 に伴う脂肪便など), 褐色細胞腫(発汗,頭痛,血圧上昇)などを念頭に置く.
摂食の低下であれば,悪性疾患(特に,消化管,肝,膵,腎,肺の悪性腫瘍, 白血病, リンパ腫など),精神疾患(神経性食欲不振症,アルツハイマー病,うつ病など)を念頭に置く.
   
表 体重減少のスクリーニングテスト
第1段階
末梢血,血沈
検尿
生化学
甲状腺機能
胸部X線
便潜血
第2段階
腹部CT,エコー
上部,下部消化管検索
内分泌学的検索(副腎ホルモン関係など)
血液培養
骨髄生検

図1 体重減少へのワークアップ
図1 体重減少へのワークアップ

  年齢からの鑑別としては,一般に,若齢では,糖尿病,甲状腺機能亢進症,神経性食欲不振症,感染症(HIV感染,結核,心内膜炎)などを,高齢では,悪性疾患,精神疾患をまず考える.
 
2. 体重増加(図2)
  まず,脂肪過多なのか, 水分過多なのかを判断する (いつごろからどのくらい増加したのか).
脂肪過多であれば,多く(80〜90%)は, 単純性肥満である. その他,甲状腺機能低下症クッシング症候群, 視床下部障害(craniopharingiomaなど)を念頭に置く.
一方,水分過多であれば, 慢性心不全腎不全腹水を伴った 肝硬変 などを念頭に置く.
   
図2 体重増加へのワークアップ
図2 体重増加へのワークアップ
〔体重の増減に関する基礎知識〕 〔体重の増減に対するワークアップ〕
ページトップへ戻る 先頭へ戻る


参考文献
(1) Foster, D.W. Gain and loss in weight. In Harrison's principles of internal medicine (14th ed). p.244〜p.246, 1998.
(2) 坂田利家,肥満,るいそう.内科学 第7版,朝倉書店.p.147〜p.149, 1999.
   


最終更新日: 2000年 10月 05日
執筆者名:島田 朗,所属:慶應義塾大学医学部内科