1章

症状による診断へのアプローチ


(C) 医療研修推進財団

 

リンパ節腫脹

 

研修必須事項

 

リンパ節腫脹の場合,まず十分な現病歴と身体所見をとる.

リンパ節腫脹が正常範囲であるか,精査を要するような病的なものかを判断する.

リンパ節腫脹の大きさ,固さ,分布,圧痛の有無など,および耳血や生化学データなどを参考としてリンパ節生検の適応を決定する.

造血器腫瘍を疑ってリンパ節生検を行う場合は,病理組織検査に加えて新鮮材料を用いて細胞表面マーカーや染色体分析などを行う.

 


 

〔リンパ節腫脹に関する基礎知識〕

 

〔リンパ節腫脹へのワークアップ〕

〔参考文献〕

 

 

 




  リンパ節腫脹に関する基礎知識

 

リンパ節腫脹は,リンパ節におけるリンパ球や組織球の増生,ないしはリンパ節外に由来する細胞の浸潤による.

 

リンパ球の過形成や増生によるもの

リンパ腫,甲状腺機能亢進症など.

組織球の増生によるもの

脂質代謝異常症,組織球症,一部のホジキンリンパ腫など.

リンパ節外に由来する細胞の浸潤によるもの

リンパ節炎(好中球浸潤によるもの),転移性腫瘍,白血病など.

 

病因的には,感染症,免疫異常,悪性疾患,脂質代謝異常症,内分泌疾患などに分類される(表)
健康人でも1cm以下のリンパ節を,特に成人では鼠径部に2cm程度のリンパ節を触知する場合がある.
小児では成人に比較してリンパ節を触知することが多い.

 

 

表 リンパ節腫脹を認める疾患

 

感染症

 

ウイルス,細菌,真菌,クラミジア,寄生虫,リケッチア

免疫学的疾患

 

慢性関節リウマチ,若年性関節リウマチ,MCTD,SLE皮膚筋炎シェーグレン症候群,血清病,薬物アレルギー,原発性胆汁うっ滞型肝硬変,GVHD

悪性腫瘍

 

造血器腫瘍

 

 

ホジキンリンパ腫,非ホジキンリンパ腫,急性・慢性リンパ性白血病など

 

転移性腫瘍

 

 

さまざまな悪性腫瘍

脂質代謝異常

 

Gaucher病,Niemann-Pick病など

内分泌疾患

 

甲状腺機能亢進症

その他

 

Castleman's disease,Sarcoidosis,Dermatopathic lymphadenitisなど



〔リンパ節腫脹に関する基礎知識〕

 

〔リンパ節腫脹へのワークアップ〕

〔参考文献〕

 

 

 




  リンパ節腫脹へのワークアップ(図)

 

現病歴では咽頭痛やリンパ節痛,咳といった局所兆候,発熱,盗汗,易疲労感,体重減少といった全身症状,職業,ペット飼育の有無,性行動や薬剤使用歴などを確認する.
理学所見ではリンパ節腫脹の分布や部位(限局的か全身性か),大きさ,性状(固さ,自発痛・圧痛,可動性),炎症所見,皮膚病変,脾腫などに注意する.また,耳・鼻・咽頭所見も確認する.

 

図 リンパ節腫脹へのワークアップ

図 リンパ節腫脹へのワークアップ



1.

分布・部位

 

全身性の場合は多くの病因がある(伝染性単核球症,トキソプラズマ症,AIDS,その他ウイルス感染症,SLE,MCTD,慢性リンパ性白血病,悪性リンパ腫など).
限局性の場合は部位が疾患との関連を考えるうえで重要である.

 

 

 

 

 

後頭部

頭皮の感染症.

 

耳介前部

結膜炎や猫ひっかき病.

 

頸部

良性疾患としては上気道感染症,口腔や歯牙病変,伝染性単核球症などのウイルス感染症など.悪性疾患では頭頚部癌,乳癌,肺癌,甲状腺癌,悪性リンパ腫など.

 

鎖骨上窩,scalene LN

肺や後腹膜の悪性腫瘍や感染症.

 

Virchowのリンパ節腫脹

消化器癌や肺癌の転移.

 

鎖骨上窩

肺癌,乳癌,性器癌,結核,サルコイドーシス,トキソプラズマ症.

 

腋窩

同側上肢の外傷や感染症,乳癌,悪性リンパ腫,悪性黒色腫.

 

鼡径

下肢の外傷や感染症,STD,悪性リンパ腫,癌(直腸,外陰部,下肢).

 

2.

大きさ

 

1cm未満のほとんどは反応性なので経過観察のうえ精査の適応を考慮する.
1.5〜2cm以上のものでは肉芽腫や悪性腫瘍の確率が高くなる.

 

3.

性状

 

固さ,圧痛,可動性について評価する.
圧痛は急速なリンパ節腫大に伴って皮膜が伸展したときに認められる.多くは炎症性だが,ときに急性白血病などでも認められる.
リンパ腫でのリンパ節は,大きく,融合は少なく,弾性硬,可動性に富んで圧痛を伴わない.
転移性癌では,固く,圧痛はなく,可動性が乏しい.
脾腫を伴うときは全身的疾患(伝染性単核球症,悪性リンパ腫,白血病,SLE,サルコイドーシス,トキソプラズマ症,猫ひっかき病など)を考える.

 

 

深在性リンパ節腫脹は理学的所見で確認できない場合も多いが,これを疑わせるような症状や所見に注意する.

 

胸腔内リンパ節腫脹

 

  ,喘鳴,嗄声(反回神経麻痺),嚥下困難(食道圧迫)

 

  頸部・顔面・上肢の腫脹(上大静脈症候群).

 

腹腔内リンパ節腫脹

 

  腹部膨満感,背部痛,下肢の浮腫.

 

4.

血液・生化学検査

 

耳血(EBVやCMV感染症,白血病,白血化したリンパ腫,感染症,自己免疫疾患に伴う血球減少など).
血清診断〔ウイルス抗体(EBV,CMV,HIVなどのウイルス感染症,トキソプラズマ症,ブルセラ症,自己免疫疾患)〕.

 

5.

胸部X線

 

6.

リンパ節生検

 

適応は病状に応じて決定する.
転移性腫瘍が疑われる場合はまず原発巣の検索を行う.原発巣が見つかればその部位の生検を行う.原発巣が認められない場合や造血器腫瘍が疑われる場合には速やかにリンパ節生検を行う.
はじめに吸引細胞診を行うことは勧められない.吸引細胞診では正確な診断が得られない場合も多く,診断が遅れるおそれがあるからである.ただし,診断がついている場合に再発を確認する目的には有用である.
造血器腫瘍が疑われる場合は,ホルマリン固定を行う前に生検材料を分割し,新鮮材料を用いて細胞表面マーカー解析や染色体分析を行う.



〔リンパ節腫脹に関する基礎知識〕

 

〔リンパ節腫脹へのワークアップ〕

〔参考文献〕

 

 

 

 


参考文献

 

(1)

Henry, P.H. & Longo, D.L.: Enlargement of lymph nodes and spleen, in Harrison's PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE, 14th ed. Fauci, A.S. et al.(eds.) McGraw-Hill Companies, Inc.: 345-351, 1998.

(2)

Pangalis, G.A., Vassilakopoulos, T.P., Boussiotis, V.A., Fessas, P.: Clinical approach to lymphadenopathy. Seminar in Oncology, 20: 570-582, 1993.

(3)

Zuelzer, W.W. & Kaplan, J. : The child with lymphadenopathy. Seminar in Oncology, 12: 323-334, 1975.

 

 


最終更新日: 2006年 09月 31日
執筆者名:木下朝博,所属:名古屋大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科学