12章

アレルギー性疾患/膠原病


(C)医療研修推進財団

No.2

アトピー性皮膚炎

 

Check

 

1.

アトピー性皮膚炎は,アトピー素因を基礎に発症する慢性湿疹性皮膚疾患である. 

2.

症状は乳児期・幼小児期・成人期に大別されそれぞれ特徴的な皮膚所見を呈する.

3.

診断後は皮膚科専門医による治療が原則である.

4.

合併症として感染症と眼合併症に留意する.

5.

患者や家族に過度の不安を抱かせない.

 


 

〔症状と所見〕

 

〔確定診断の方法」手順〕

〔予防と治療〕

 

〔注意すべき合併症〕

〔患者と家族への説明の要点と注意点〕

 

〔参考文献〕




  症状と所見

 

乳児期」幼小児期」成人期に大別され,それぞれ特徴的な皮膚所見を呈する.(図1)

 

1.

乳児期:まず,いわゆる「乳児脂漏性皮膚炎」の臨床像を呈する.具体的には鱗屑を有する紅斑が頭部」顔面」頸部」腋窩」鼡径部」殿部等に出現する.頭部」顔面の鱗屑は厚く固着し,浸出液を伴って痂皮となることもある.こうした落屑性紅斑に丘疹」漿液性丘疹等の急性湿疹病巣も伴う.

 

2.

幼小児期:全体的に乾燥性の皮膚となり,顔面には細かい鱗屑が付着していわゆる「ハタケ(単純性粃糠疹)」の像を呈する.躯幹等は毛孔性角化により鳥肌状となる.こうした乾燥性皮膚上に丘疹」痒疹」苔癬化局面を生じ,掻破により拡大する.肘窩」膝窩の苔癬化局面は特徴的と言える.

 

3.

成人期:幼小児期と同様の乾燥性皮膚上に慢性湿疹性病変を伴う病変が上半身中心に分布し,重症例では全身に皮疹を生じ紅皮症状態となったり四肢に硬くしこった痒疹様小結節が多発する.また,顔面や頸部に難治性の紅斑を生ずることも多い.

 

 

 

図1 アトピー性皮膚炎の皮膚所見

図1 アトピー性皮膚炎の皮膚所見




〔症状と所見〕

〔確定診断の方法」手順〕

 

〔予防と治療〕

〔症状と所見〕

 

〔確定診断の方法」手順〕

〔注意すべき合併症〕

 

〔患者と家族への説明の要点と注意点〕

〔参考文献〕

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  確定診断の方法」手順

 

日本皮膚科学会による「アトピー性皮膚炎の定義」診断基準」(表1/文献1)があるが,その特徴的臨床像と慢性の経過より比較的診断は容易であると思われる.

 

表1 アトピー性皮膚炎の定義・診断基準(日本皮膚科学会)

 

アトピー性皮膚炎の定義(概念)

 「アトピー性皮膚炎は,増悪・寛解をくり返す,瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くはアトピー素因を持つ.」
 アトピー素因:
 (1)家族歴・既往歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちのいずれか,あるいは複数の疾患),または (2) IgE抗体を産生しやすい素因.

アトピー性皮膚炎の診断基準

 

1.

瘙    痒

2.

特徴的皮疹と分布

 

(1)

皮疹は湿疹病変

 

 

急 性 病 変

紅斑,湿潤性紅斑,丘疹,漿液性丘疹,鱗屑,痂皮

 

 

慢 性 病 変

浸潤性紅斑,苔癬化病変,痒疹,鱗屑,痂皮

 

(2)

分布

 

 

左右対側性

 

 

 

好 発 部 位

前額,眼囲,口囲・口唇,耳介周囲,頸部,四肢関節部,体幹

 

 

 

 

 

 

参考となる年齢による特徴

 

 

 

乳 児 期

頭,顔にはじまりしばしば体幹,四肢に下降.

幼 小 児 期

頸部,四肢屈曲部の病変.

思春期・成人期

上半身(顔,頸,胸,背)に皮疹が強い傾向.

3.

慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する)

 

 

 

 

乳児では2か月以上,その他では6か月以上を慢性とする.

 上記1,2,および3の項目を満たすものを,症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する.そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし,経過を参考にして診断する.

除外すべき診断

 

接触皮膚炎

 

汗    疹

脂漏性皮膚炎

 

魚 鱗 癬

単純性痒疹

 

皮脂欠乏性湿疹

疥    癬

 

手湿疹
(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため)

診断の参考項目

 

・家族歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎)

・合併症(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎)

・毛孔一致性丘疹による鳥肌様皮膚

・血清IgE値の上昇

臨床型(幼小児期以降)

 

四肢屈側型

 

痒 疹 型

四肢伸側型

 

全 身 型

小児乾燥型

 

これらが混在する症例も多い

頭,頸,上胸,背型

 

 

 

重要な合併症

 

眼症状(白内障、網膜剥離など)
とくに顔面の重症例

 

伝染性軟属腫

カポジー水痘様発疹症

 

伝染性膿痂疹

 

日本皮膚科学会



〔症状と所見〕

〔確定診断の方法」手順〕

 

〔予防と治療〕

〔症状と所見〕

 

〔確定診断の方法」手順〕

〔注意すべき合併症〕

 

〔患者と家族への説明の要点と注意点〕

〔参考文献〕

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  予防と治療

 

日本皮膚科学会による治療ガイドライン(文献1)等もあるが、本症は慢性に寛解」増悪をくり返すのが特徴であり,皮膚炎の状態に応じたきめ細かい治療が重要である.従って皮疹の評価,最適な内服」外用剤の選択等に習熟した皮膚科専門医による治療が原則で,診断後は専門医への紹介が望ましい.
治療は外用療法」内服療法」生活指導が3本柱となる.

 

1.

外用療法:ステロイド外用剤が基本となる.皮疹の状態に応じて,最適なランクのステロイド外用剤を選択する.皮疹の程度によっては,非ステロイド外用剤」保湿剤等も併用する.外用剤の基剤にも軟膏」クリーム」ローション等種々存在し,皮疹の状態に応じた選択が必要である.
この他,免疫抑制剤であるタクロリムスの外用剤(プロトピック
(R)軟膏0.1%、0.03%小児用)はアトピー性皮膚炎の難治性顔面病変に有効であることが知られている.(III)、その後(T)〜(U)の比較研究多数  以下 ( ) のローマ数字はEvidence Level を示す.(文献2)

 

2.

内服療法:著しい重症例以外では原則としてステロイド内服は行わない.
本症は掻破により悪化し,悪化により瘙痒が増強し,さらに掻破するという悪循環により増悪するため,痒みのコントロールが重要であり,このために抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服を行う.抗アレルギー剤では単なる止痒効果以外に種々の抗炎症作用を有することが知られている.大規模RCTによる有効性の報告も一部の抗アレルギー剤で出ている
(T) (文献3)
重症のアトピー性皮膚炎に対し,シクロスポリンの内服療法が有効であることが知られており,内服時の吸収を改良した剤形(ネオーラル
(R))が欧米ではすでに使用されているが,本邦でも保険適応となる見込みである.(III) シクロスポリン製剤全体では(T)〜(U)の比較研究多数(文献3)

 

3.

生活指導:本症には発汗,乾燥,ダニ」ハウスダスト」カビなどのアレルゲン等種々の増悪因子が存在する.このため,これらの増悪因子を認識」忌避させるための生活指導も治療の一環として必須である.また,入浴については過度な洗浄は良くないが,逆に洗浄を全くせず,皮膚の保清がなされないのも問題であり,「適度の洗浄」が必要である.石鹸については刺激にならなければ通常のものでよい.

 

 

 

 

 

 

 

〔症状と所見〕

〔確定診断の方法」手順〕

 

〔予防と治療〕

〔症状と所見〕

 

〔確定診断の方法」手順〕

〔注意すべき合併症〕

 

〔患者と家族への説明の要点と注意点〕

〔参考文献〕

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  注意すべき合併症

 

1.

皮膚感染症:アトピー性皮膚炎患者の皮膚ではバリア機能が低下していることが知られており,特に湿疹病変を生じた部分では正常の皮膚に比べて細菌やウイルスの侵入が起こりやすい.主として黄色ブドウ球菌により,水疱や膿疱」痂皮性湿潤病変が拡大する伝染性膿痂疹(いわゆる「とびひ」)と単純ヘルペスウイルスにより水痘様の水疱」膿疱が多発するカポジー水痘様発疹症が代表的である.皮疹の急速な増悪を見た場合には単なる湿疹の増悪と考える以外にこのような皮膚感染症の合併を考慮するべきである.

 

2.

眼合併症:白内障と網膜剥離が代表的である.白内障についてはその原因として一時,顔面へのステロイド外用剤の使用が疑われたが,現在では外用剤は無関係で眼をこする行為による可能性が高いと考えられている.網膜剥離も眼をこすったりたたいたりすることによると考えられている.いずれも放置すれば失明につながる重大な合併症であり,注意が必要である.

 

 

 

 

 

 

 

〔症状と所見〕

〔確定診断の方法」手順〕

 

〔予防と治療〕

〔症状と所見〕

 

〔確定診断の方法」手順〕

〔注意すべき合併症〕

 

〔患者と家族への説明の要点と注意点〕

〔参考文献〕

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  患者と家族への説明の要点と注意点

 

最近,アトピー性皮膚炎について誤った情報が氾濫しており,患者や家族の間で混乱を生じ,本症に対して過度の不安を抱いているケースがよくある.
アトピー性皮膚炎は遺伝的素因に後天的要素が加わって発症するものであり,一部で言われているような不治の病ではけっしてないことをよく説明する.アトピー素因自体を治療することはできないが湿疹病変を治療によりコントロールし,生活環境の改善に努めることで良好な状態を保つことが可能であることを理解させる.また,年齢とともに自然治癒する例が多いことを説明し,過度の不安を抱かせないように注意する.

 

〔症状と所見〕

〔確定診断の方法」手順〕

 

〔予防と治療〕

〔症状と所見〕

 

〔確定診断の方法」手順〕

〔注意すべき合併症〕

 

〔患者と家族への説明の要点と注意点〕

〔参考文献〕

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参考文献

 

(1)

日本皮膚科学会:アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2004改訂版, 日本皮膚科学会雑誌:114:135, 2004

(2)

Nakagawa H., Etoh T., Ishibashi Y., Higaki Y., Kawashima M., Torii H., Harada S:Tacrolimus ointment for atopic dermatitis.[letter]. Lancet, 344(8926):883, 1994.

(3)

Kawashima M., Tango T., Noguchi T., Inagi M., Nakagawa H., Harada S. :Addition of fexofenadine to a topical corticosteroid reduces the pruritus associated with atopic dermatitis in a 1-week randomized, multicenter, double-blind, placebo-controlled, parallel-group study.. British Journal of Dermatology,148:1212-1221,2003

(4)

Bourke JF., Berth-Jones J., Holder J., Graham-Brown RA: A new microemulsion formulation of cyclosporin (Neoral) is effective in the treatment of cyclosporin-resistant dermatoses. British Journal of Dermatology, 134(4):777-779, 1996

 

 


最終更新日: 2006年 10月 30日
執筆者名: 玉木 毅,所属:国立国際医療センター皮膚科