「医療提供体制の現状と課題」
−財団法人医療研修推進財団  第10回講演会より−
厚生労働省医政局指導課長
  佐藤 敏信先生

 ご紹介を頂きました厚生労働省医政局指導課の課長で佐藤と申します。パソコンの準備ができるまでの間、簡単にお話をしたいと思いますが、今日は本来ですと医政局長の外口崇が参りまして講演をするべきところでございましたが、国会情勢その他のがございまして、今日は参上することができません。私はそういう意味では代打という形で参上いたしました。少し振り返ってみますと、実はこの講演会は10回目ということでございますが、ちょうどこの医療研修推進財団ができるとき、そして最初の講演が行われたときにちょうどそのとき私は医事課の補佐をしておりまして、そういう意味ではちょうどあれから10年経ったんだなという思いを強くしております。またその10年前、まだまだ法案にまではなっていませんでしたが、医師臨床研修というものの制度を作るための準備をちょうどしていましたので、そういう意味でも非常にこの臨床研修推進財団、医療研修推進財団、そしてその講演会の歴史というものは私自身のこの10年の歩みと共になんとなく懐かしく思い出していた次第でございます。さて、今日私は先ほども申しあげましたように代打ということで参上しまして、局長からはかなり厚めのスライドをいただきまして、それで話をしてこいということであったのですが、今日はちょっと早めに参りまして大島先生のご講演を承っておりますと、大変高邁なお話をされておりまして、持参した資料をだらだらとしゃべっているには、今日お集まり頂いた先生方のお耳にかなわないというか、お目にかなわないというか、十分な満足を頂けないのではないかと思いまして、ちょっと趣向を変えましてちょうど2週間前に、他で講演をしたときのスライドを使いましてお話をしたいと思っております。
 もう少し時間がかかるようですのでお話をしますと、もともとこの医療研修推進財団というのは医事課の所管でございまして、医師法を中心とします身分法、それからその身分法に基づく医療関係職種の方の生涯教育だとか生涯研修というものを念頭に創設されたものでございます。従いまして、課でいうと医事課が所管になるわけでして、指導課はどちらかというと病院指導というところからスタートしておりますので、医療法人制度を通じた民間病院の指導が中心となりまして、実は必ずしも先生方、今日お集まりになっておりますような医療関係職種の研修ということとは直接関係ないのですが、総務課の抱えておりますこと、医事課の抱えておりますことも含めて少しお前が説明してこいということになりました。

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 それでは先ほども申しあげましたようにスライドの使い回しで恐縮ではございますが、こちらの方でお話をしたいと思います。最初は医療に関わる行政についてなのですが、先ほど大島先生も似たようなことをおっしゃっていたのですが、人と箱とカネから成っております。人は読んで字のごとくでございまして、医師法などの身分法でしてこれは医事課がやっております。それから個々の医療機関の幹部研修は保健医療科学院(旧病院管理研究所)のようなところがやっております。また、箱に関しては、箱は建物になります。病院であったり診療所であったりしますが、そういうところは医療法になりますので、総務課と私ども指導課が共同でご指導申しあげております。カネは読んで字のごとくなのですが、大きく二つありまして、一つは施設整備補助金あるいは設備整備補助金ということで、指導課の方でもっております。旧来は公立病院それから公的と呼ばれる済生会、日赤、それに民間病院に対して補助金をもっていたわけですが、三位一体改革以降は公立に対する補助金はなくなりまして、現在では済生会、日赤等の公的、それから民間に対する補助をしているということになります。それと併行して一番重要なところですが、診療報酬制度に代表される健康保険法というのは保険局各課がやっております。人、箱、カネ、これが行政のテリトリーになります。これらを整理してみますと、人、箱、カネというのが土台のようにありまして、カネは補助金と診療報酬、これは医政局、それから保険局と医政局、そしてその上に医学教育、特に卒前教育を中心とする医学教育が乗っかりまして、全体を行政がやっています。非常に重要なことは、良い医療だとかあるべき医療、あるいは専門研修、生涯研修、これは基本的には役割分担としては医師会であったり学会であったり、こういうことがやるというところです。ですから、厚生労働省に対してしばしば良い医療、あるべき医療をもう少しよく考えようだとか考えてほしいだとか、あるいは逆にあまり余計なことを言うなという方もいらっしゃいますが、歴史的に振り返りますと、この赤い部分を行政が、つまり土台になる部分を行政が担って良い医療、あるべき医療というものについては基本的には学会等にお願いするという構造だろうと思います。

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 そういう中で今年はまだ1月中ということですから今年のスケジュールをちょっと見直してみたいと思いますが、診療報酬改定があり、後期高齢者医療制度、おそらく大島先生のお話の中にあったと思いますが、それが特定健診、保健指導、こういうスケジュールが目白押しになっています。ちょっと黄色にしたものは、私ども指導課に関連する部分ということで準備をしたのですが、医療法人制度、今日は民間病院の先生はほとんど皆無と言っていいくらいかと思いますが、直接関係ないかもしれませんが、医療法人制度60年ぶりと言っても良いくらいの大改正をやったのですが、関連する税制、いよいよ社会医療法人という新しい制度がスタートします。それから新医療計画、それに介護報酬改定、こういうようなことが目白押しになっています。さらには療養病床の再編に伴いまして医療費適正化計画などもありますし、直接厚生労働省とは関係ありませんが、またあまりそれほどマスコミ等でも話題になっていませんが、平成19年12月に総務省の方から公立病院改革という動きが打ち出されまして、おそらくは今年の前半は公立病院改革をめぐる動きというのが急になりまして、相当の話題になると思われます。これが大きな話です。

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 スケジュール、今申しあげましたのは厚生労働省が勝手に決めたと申しましたが、国民の皆様方にお願いしているスケジュールなのですが、これとは別の視点で俯瞰してみますと、医療を含む社会保障費をどうやって確保していくかという議論が非常に大事でして、これは後ほど時間があれば申しあげますが、国会も含めて本当はきちんと議論頂かなければならないのですが、この問題が非常に重要だということです。おそらくはもう限界だ、避けては通れないという話になると思います。一方、医師確保ということで、10年前を振り返りますと、もしかしたらまだまだ医師は過剰なのかもしれないなんてことを言っていたのですが、この10年の間に様相が一変したということです。特に診療科間の偏在、地域間の偏在、偏在の行き着くところは不足感というものが大いにあるということだろうと思います。
 それから、病院診療所の役割分担について。おそらくこれは連携という形で先ほど大島先生からもお話があったと存じますが、病院と診療所の役割分担、こういうことも少し考えていかなければならない、というところだろうと思います。

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 それから、医療の分野の固有の問題としては、医療の質の評価というのが非常に重要になってくるんだろうと思います。私ども指導課では医療機能評価機構というところも所管をしているわけですが、こういう医療の質の評価、それから(スライドの)ロはちょっと違った視点ですが、勤務医の処遇だとか勤務医の過重労働が問題になっていますが、一言で言うとこれに尽きるわけですね。日本の給与、あるいは処遇というのは労働の量や質、確保の困難性に着目しない、年功序列一本による、言ってみれば結果平等で続いてきたわけですが、このことが勤務医の皆様方の過重労働感、疲弊感につながっているわけですが、こういうところをきちんと整理しなければならないと思います。特に国公立、公的病院。
 それから二つめはこのロと絡むわけですが、病院の収入と個々の勤務医の収入とがリンクしていないということです。診療報酬で今般の勤務医の労働過重に対する改善をすると言っているわけですが、いくら診療報酬を上げても多くの公立病院にとってみれば一般会計繰り入れということをやっておりますので、一般会計繰り入れの赤字を埋める、補填の額を埋めるだけ、つまり私はシンボリックによく言うのですが、市長さんの金庫が埋められるだけで診療報酬は個々のお医者さん、わかりやすく言えば勤務医の月給に転嫁されるわけではない、そういう保証はないという状況です。こういったところを改善しない限り、いくら診療報酬を上げようと改善はしないわけです。この辺をもう少し議論する必要があると思います。
 それからハは、診療報酬上きちんと要望を出していくにしても、医療機関における真のコストだとか収支計算をきちんとしないと、今は中医協はクローズドではなくてオープンで議論をしていますから、データがないまま外科が大変だから上げて下さい、小児科が大変だから上げて下さいというわけにはいかないだろうということで、やはり収支計算が必要だろうということです。

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 ところであの話はどうなったかな?これはちょっと今日は民間病院の先生方はあまりおられないのでいいと思いますが、医療への株式会社参入論というのがちょうど1年くらい前まではまだ燃えさかっていたのですが、一定の解答を出したので今はちょっと火は消えかかっています。それから混合診療はあくまでも保険局は戦う姿勢のようでして、今後も議論されると思います。
 それから医行為に関する規制緩和というのは規制改革会議の中で、例えば看護師やそういうメディカルな職種に、本当に医者が忙しいなら少し業務を委譲したらどうかという議論が出てきておりまして、こういう話も引き続き議論しなければいけないのかもしれません。医師不足との関連で最近はこういう動きになっています。

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 いよいよ本論なのですが、一部繰り返しになりますが、医療の何が今問題かというと医療そのものの評価、これは良いでしょうね。それから民間病院、おそらく公立病院も平成20年の4月頃には大変な状況になっていると思いますが、病院の経営というのが非常に問題になってくると思います。特に良い医療と経営とどう兼ね合うか、国公立病院の経営をどうするか、これは後述いたします。それから単に良い医療とか経営をやるだけではなくて、医師が十分確保できなければ医師一人で1億5千万円くらい稼いでいるのでしょうから大変なことになると思います。それから、医療の財源の確保、これは何度も出てきましたが後述いたします。
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 この辺はちょっと先生方の方がプロですからとばしまして、経営の話だけちょっと触れておきます。先ほど三つ挙げた中の一つめは医療の質の評価だったのですが、その話をしていると今日は時間がなくなるので、二つめから話します。医療経営とその要素、どう分類するかは学者によって様々なようですので、この分類だけがすべてではないのですが、私流に分類してみますと大きくは二つ、医療と経営というふうに分けられるのかなと思います。医療の中には医療の評価もあるし、方針や安全とかいうものもあります。経営の中で細かく見ていくと、経営方針とか財務、税務、労務とか、またやはり細かく四つに分かれます。赤い部分が行政の関与とその程度を示しているのですが、行政がこれまでにやってきたことというのはほとんど医療法人制度を通じた税務だったということになります。例えば特定医療法人における軽減税率だとか、あるいは今般社会医療法人で医療保険業の非課税というのを達成したわけですが、基本は税務という部分で支援をしてきたのですが、2000年が近くなる頃にようやく医療の評価、医療機能評価機構を使って医療のアメニティを中心とした評価をしてきたり、あるいは医療の安全というのが非常に重要になってきましたから、医療機能評価機構のお力添えを得ながら「ヒヤリハット」の事例集を作るだとか、あるいは院内感染のガイドラインを作るだとかしてやってきましたが、例えば財務だとか、非常に最近話題になっている労務の問題、例えば医師の交代制がなぜできないのか、あるいは特殊な手術や分娩などのような特殊な技能や、あるいは長時間労働をしたときにきちっと処遇がなされるかというようなところについてはあまり触れてこなかったということが言えます。これらを整理するとこういうことになりますが、いずれも行政、学会等の取り組みが弱かった分野ということになります。冒頭にも申しあげましたように旧病院管理研究所、今の保健医療科学院がトップセミナーと称してこういうこともやっていたはずなのですが、その時代にはやはり国公立病院の院長先生とか、あるいは事務長さんが中心だったので、税務というのは基本的に関係ありませんし、財務もそれほど今ほどではなかったし、労務などはもう国家公務員の人事規則、給与規則、あるいは地方公務員人事規則だから、自分たちの裁量の範囲というのは少なかったわけですが、独法(独立行政法人)、指定管理者制度というようなものが出てくるに至って、非常に裁量の余地が出てきたわけです。病院長、事務長の裁量の余地が出てきました。今こそ保健医療科学院も含めて病院の運営、経営というのをどうやっていくのかということが重要なテーマになっていくはずなのですが、なかなか行政の関与というのは薄いという状況です。

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 さて、今日のテーマの最大のところは、医療の財源の確保の話をしたいと思っております。おそらく今日お集まりの中でお医者さん方というのはなぜ医師数というのは増やせないのだろうとか、あるいは今回の診療報酬も本体部分で0.38%のアップしかできなったのですが、なぜこんなことになるのだろうと思っていると思います。色々なことをたどっていくと、要するに厚生労働省がけちけち政策をやっているところに原因があるのだろうとお考えであろうと思います。結論から先に言うとだいたい当たっているのですが、しかしその先にもっと大きな理由があるということを今日はお話ししようと思います。

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 日本の医療のレベルは先生方に申しあげるのは釈迦に説法なのですが、平均余命は男女ともにとは言いませんが、男女ともに1位ないし1位に近いレベルです。それから新生児乳児死亡率の国際比較をしましても、シンガポールのような非常に狭い地域を除けば最低ランク、つまり一番死亡率は低いランクですからアウトカムを見る限りでは最高の水準にあると思います。ところがよく出てくる表ですが、国民医療費対GDP比で見ますと、日本は下から4番めくらいのレベルです。それから医師数についても見てみますと、日本より少ないところというのは韓国くらいのものです。ちょっとご注意を頂きたいのが、私は10年前に医事課にいたと申しましたが、10年前に医事課にいた頃は日本というのは人口10万対の医師数というのはだいたい1.9とか1.8くらいでして、イギリスが1.5くらいでうろうろしていました。たった10年で2.3までのしてきて、それから戻りますが、医療費も対GDPでイギリスに抜かれてしまって、これはどういうことかというとそれは簡単でして、サッチャー政権以後のブレア政権下で医療の崩壊ということが非常に話題になりまして、医療というものを充実させるのだということでお金も人も投入するということに方針を大転換したからでございます。特に医師については、私もちょうどそのあたりを医事課で学んでいる最中だったのですが、まず医学部の定員を増やし、それから医学部そのものの増設を認める、それから旧英連邦からの医者の流入というのは基本的には容認をしていくというような形でお医者さん達の移民の形になるかと思いますが、お医者さんをどんどん入れました。それからもちろん医学部の定員を増やしました。こういうことであっという間に日本を抜き去ってしまったということであります。そういう意味でよく話題に出ますフランスやドイツが人口10万対で350というところですから、日本は半分とまでは言いませんが3分の2くらいのところでうろうろしているという状態にあります。ただ、一つだけ申しあげておきますと、医学部の定員そのものはそう少なくはありませんので、医学部の新設医大と呼ばれるところや、そういうところのお医者さんがある程度歳をとって下されば、つまり15年とか20年とかいうスパンでものを見て頂きますと、日本も結構なところまで、300いくかというところまで来るだろうという単純な算数の計算ができるわけです。しかし現時点では日本はこういう下位に甘んじています。

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 これはちょっと余談になりますが、医学部の定員は結構あるのだという話をしました。それは事実なのです。医学部の定員というのは各国、今日はデータは持ってきていませんが、見てみますと、日本は人口あたりで見ると意外と多いです。ではどこに行っているのかというのを調べたのがこれです。ちょっと見づらいと思いますが、各診療科医師が1994年を基点に100として10年間でどれくらい伸びたかというのを、医師、歯科医師、薬剤師を調査して私がちょこちょこっとデータを作ってみたのですが、理学療法科、リハビリテーション科というのは10年の間に2.25倍になっています。以下、ちょっとよく見えるかどうかわかりませんが、黒いところは形成外科、それからちょっと悲しいのが婦人科単独というのが意外に多いです。このほかもうちょっと長いスパンで見ると、眼科、耳鼻科というようなところが増えています。減っているところを見ますと、有名な産科プラス産婦人科というところは確実に減っています。ここはちょっと見えませんが、私が自分で外科の小計というのを作ってみました。外科の中でも消化器外科や循環器外科などがありますから、そういうのを小計でとってみますと、実はやはりマイナスなんですね。今日差し障りがあるかもしれないのであまり申しあげませんが、実は医学部の定員は多いし、それなりに卒業しているのだけれども、結果的にはある程度自分の時間が持てるような診療科を選んで頂いて、休日夜間の診療というのが比較的少ない診療科を選んでらっしゃる方が多いです。一方で、やはりメスを持ったり、飛び込みの患者さんが多いような診療科というのはせいぜい漸増か、場合によっては減少しているということですから、実はこういうところに偏在が起こっているということになります。

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 それからこれはちょっと余計な話なのですが、最近療養病床の削減という話が出ていまして、国公立の場合にはあまり話題にならないかもしれませんが、民間病院の先生方は頭から湯気が出る方が多いのですが、療養病床が廃止されたり、あるいは平均在院日数の短縮というものが強化されたりするとその行き着く先はどうかなと思って見てみたのがこれです。老人保健課とか老健局がこういうものを作っているので見てみたのですが、65歳以上人口に占める各国の介護施設、ケア付き高齢者住宅がどれくらいあるかと思って見てみますと、イギリスの半分もないということです。平均在院日数は確かに長いのですが、長い長いと言って追い出したからといって行き着く先はイギリスの半分で、なかなか入院させてもらえないというか、入院してもすぐに退院させられる、あるいは退院せざるをえない。アメリカで10%ですから、それから住宅事情等々を勘案すると、日本は退院するのは良いのですが、退院した先は自宅以外にはなかなか考えられません。そしてご存じのように参酌標準というのがありまして、これ以上あまり作れない状況ですから、少ないからといって作ろうとしても全国平均だとか地域の平均だとかから参酌標準という形で、言ってみれば病床数の規制みたいなものがされていますから、もうこれ以上は現実的にはあまり増えないという構造になっています。なかなか退院するのも楽ではありません。
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 そもそもなぜこうなるのかということなのですが、今日はこの話をしているだけで時間が経ってしまいますからポイントだけ言いますが、要するにこの5,6年だけでみますと、均衡財政、つまりプライマリーバランスの達成ということだけで国全体の方針が決められているということが言えます。均衡財政、プライマリーバランスの達成というのはどういうことか、というとこれは簡単でして、家計で言うならば借金返しとかは別として、入ってくる収入の範囲で暮らしましょうということです。入ってくる収入と出ていく支出とがだいたい均衡するようにしましょう、ただし国債の形で借りていた借金は別だということです。これは当たり前のことですね。余談になりますが、入ってくる収入以上に生活していた時代があるのかというと、それがあるのです。例えば1990年代の前半だとかはバブルが崩壊して景気浮揚を目的としてケインズ理論に基づく最後の施策と言われていますが、積極財政をして、結果的には国債残高だけが増大してしまいました。本当に景気浮揚が進んだのか、あるいは失業率が減ったのかはよくわからないままともかくツケだけがまわってしまいました。だから、もうさすがに困ったなということで、これからは均衡財政ということで入ってくる収入の範囲で暮らしましょうということを決めたわけです。それからもう一つめは、これは好き嫌いの話になりますが、経済成長と社会保障というのはある程度リンクするのだと、経済成長あっての社会保障だということです。

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 今日は何枚もスライドを持ってきているのですが、その中で重要なスライドを2枚挙げろと言われたらそのうちの1枚はこれになるのですが、最近よく2200億円達成、1年間で2200億円節約という話が新聞紙上に躍るようになりましたから多少覚えていらっしゃると思いますが、この赤枠で囲ったところです。実はこの基本方針2006というのが別名骨太の方針と言われるもので、小泉総理が退陣する寸前くらいにこういう置き手紙を残してご退陣になったわけですが、そのまま2006年をベースにして放っておきますと、例えば社会保障は31兆1千億円が39兆9千億円になり、以下公共投資やその他の分野だとかを含めると107兆3千億円が128兆2千億円になります。これは改革で少し節約しましょう、そして節約して16兆5千億円くらい節約しましょう、そうすると先ほど言いましたプライマリーバランスが達成できるというわけなのです。
 削減額を見てみますと、こんなような削減額になっていまして、例えば公共投資だと3兆9千億円から5兆9千億円くらい、例の社会保障については1兆6千億円ということになっています。この1兆6千億円の内訳は、国負担分は1兆1千億円、5千億円が地方負担ということになっていまして、ここで2200億円の根拠が出てくるわけですね。1兆1千億円を5年間でということですからこれを5で割ると2200億円ということになります。つまり、昨今診療報酬改定の率の検討の際に2200億円を節約した上で診療報酬の改定をしなければならないのだというようなことがよく新聞に載りますが、2200億円というのはこの数字から出てきているわけです。もう一度申しますと1兆6千億円から5千億円を引いた1兆1千億円、国費ベースですが、これを2006年から2011年の5年間ですから毎年2200億円削減しなければならないということです。以下このような感じです。
 そうしますと、よく二つ質問があります。一つは「社会保障、医療費と年金だと思うのだけど、医療費と年金の社会保障くらい聖域にしてくれよ、特別扱いしてくれよ」ということになるのですが、これはだめだというのが小泉内閣の本質でして、聖域なき構造改革というのがキャッチフレーズですから、社会保障といえども聖域ではないというのが一つですね。二つめの質問は、「それにしてもその医療だけで1兆1千億円節約するのか」という話になるのですが、それもしようがないです。結局、年金というのはもらう額が決まっていますから、物価スライドということで法律で決められてしまいましたから、節約する場というとここしかないということです。そして三つめの質問は、「ということは、医療費というのは削減し続けなければならないのですか」という質問なのですが、それはイエスでもありノーでもあります。ノーでもあるというのはどういうことかというと、31兆1千億円が38兆3千億円ですから、増えてはいるわけです。増加分の年金と医療費の割合がどうなっているかということは私も今日は見てこなかったのですが、年金も医療費も増えるということは良いけれども、増えてもほったらかしていたら人口が高齢化するとか、医療の水準が向上してすぐにCTやMRIを使ってしまうとか、そういう医療の水準の向上に伴うものは多少しようがない、考慮してやる、だけど自然にほったらかしていたときの39兆9千億円よりは減らしてね、とこういうことですから、医療をどんどん減らしていってゼロにしろという意味ではないのです。それから、質問はないのですがこんなことは言えると思います。「社会保障まで聖域なき構造改革というのはひどいのではないか、なんとかならないのか」ということなのでしょうが、分母を見て下さい。例えば私ども国家公務員の人件費というのはここに入りますが、分母が小さいのに削減額はもっと大きいわけです。それから悪名高い公共投資も、分母は社会保障の半分ちょっとくらいしかないのに削減額は結構大きいわけです。それから今日は大学の先生方もお見えになっていますが、もともと大学にいらっしゃった方や先生方もいらっしゃるわけですが、教育みたいな分野はここでして、実は今日はデータを持ってきていませんが、OECD各国の中でも高等教育にかける経費というのは非常に低いグループに属するわけですが、教育みたいなところも聖域なくぶった切られていまして、そういう意味では鬼の目にも涙というわけではないが、社会保障はまだまだ削減額は情状酌量をしてもらった方なのかもしれません。ともかくも政府全体としてみれば、繰り返しになりますが、プライマリーバランスの達成ということで、言ってみれば節約メニューですね、家計削減メニューとでも言いますが、家計再建メニューというものをつきつけられてみんなでがんばろうと、こうしてしまったので、社会保障にも同じように枠がかかっているということになります。

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 でもここで疑問がわきますね。中国やインドに追いかけられているとはいえ、それから実質的な分野ではドイツだとかあるいはフランスだとかがいるとはいえ、事実上世界第二の経済大国である日本がいったいなぜこんなめにあうかということです。今日絶対見て帰って頂きたいスライド2枚のうちの2枚目がこれなのですが、結論は実は簡単でして、このグラフを見てもぱっとわかる方はぱっとわかって頂けると思いますが、実は国民の皆様が負担するのが嫌だというその一点に尽きると思います。これを見て頂きますと、潜在的国民負担率まで入れていますから43%とるのか39%とるのかは別として、40%しか払っていません。これはどういうことかというと、仮想的に月給100万円の人がいるとします。今は振込ですから月給袋の封を開けると紙切れが入っているだけかもしれませんが、100万円の月給袋を開けると中に入っていたのは60万円だった、40万円は天引きされて60万円だったというのがこのグラフです。以下、アメリカだと100万円もらったつもりだったら、財政赤字を考慮しなければ31.9%だから残り62万円くらいが入っているわけです。そうしてみると、スウェーデンなどは100万円もらったけれど封筒の中には30万円しか入っていない、こういった構造になります。そこで中身をよく見てみると、黒の部分が租税と言われるもので所得税、あるいは大企業からお金をもらう場合には法人税ということになります。それから、ピンクの部分が社会保障負担で、これは保険料という形でとられています。私のように国共済の人は短期掛金という形で医療費をとられますし、長期掛金という形で年金保険料をとられるわけです。それから介護保険料も最近払っています。いずれにしても払ってないですよね、というのがこの表です。アメリカも払っていないのではないかという人がよくいるのですが、マイケル・ムーア氏の映画、シッコ(Sicko)を観て、ご覧のように、無保険者が山のようにいて、国民皆保険も必ずしも十分ではない。保険に仮に入っていても、査定の厳しいアメリカで医療費が事実上これにほとんど上乗せされていない状態でこれだけです。軍事費にものすごい金がかかっているのかもしれませんが、そういうことを差し引いても日本の医療のパフォーマンスから見て、あまりにも払っていないよねというのがこのグラフです。こういうことを言うと、こういう質問をする人がいます。「そうか、でも本田技研やトヨタ自動車は空前の利益をあげているらしい。あるいは松下電器のようなところもV字回復したというから、企業に払ってもらったらどうだ」という話が出てきます。それもなかなか難しくて、次(スライド)いきましょうね。

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 これを見て下さい。主な国、地域の法人税ですが、企業からお金をとる方法というのは二つしかなくて、法人税をとるか保険料の掛金、雇用主負担と称していますが、雇用主負担のどちらかでとるしかないのですが、典型的な法人税を見てみましょう。ドイツやフラン、スペインなどは、実は日本は国全体で見るとほとんど税金も保険料も払っていないのに法人税だけはがっぽりとっているわけです。がっぽりというとちょっと語弊はありますが、世界各国がこの15年くらいの間に法人税を下げたにも関わらず、日本は高止まりのままでした。いつのまにか高法人税の国になってしまいました。ですから、企業からとれるのかとれないのかという話になると、結論はとれるわけです。なぜとれるかというと、昔からこれくらいの法人税を払ってもらっていたわけですから、収益はそれなりにあがっているわけですからとれるわけです。しかしとったらどうなるかというと、世界の法人税が、じりじりと下がっています。とったらどうなるかというと、簡単で、金の卵を産む鶏が外国に逃げてしまうということか、あるいは、それでも外国に行ってはいけない法律のようなものを作ったとすると、法人税の部分が商品の価格に転嫁されるので、液晶テレビや車本体の価格が上がって、結局国際競争力を失うかどちらかです。ですから、企業から単純にとるということはできません。
 そういうふうにして考えてみると、これは赤い部分が物品税、あるいは消費税と言われるもので、ブルーの部分が個人所得税、それ以外に法人税が積み上がっているのですが、結論をものすごく急ぎますと、消費税以外で財源を確保するというのはなかなか難しいというのが、ちょっと勉強をした人ならたどり着く当然の帰結なわけです。ところが、そういう話を誰も恐れておくびにも出せないという状況です。私は最近慶応(大学)の権丈先生という助教授と仲良くなりまして、その人のスライドをもらっているのですが、その中にこういうものがありました。小泉総理は先ほども言いましたように置き手紙をしまして、節約プログラムのような節約計画表みたいなものを置いて安倍晋三さんに政権を譲ったわけですが、小泉さんはすごく頭が良いし勘の鋭い人だったので、ある人が聞いたそうです。

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 これは朝日新聞に載っていたのですが、先ほどの小泉骨太改革を提示する前の、本当に1週間くらい前の段階で「小泉さんはどんどん歳出切りつめとか節約とか言っているけれども、このまま行くつもりですか?どうするのですか」と聞いたら面白いことを言っていて、「このままどんどん歳出を切りつめていけば、やめてほしいとかいい加減にしろとかもう限界だという声がどうせ出てくるだろう、増税しても良いから必要な政策をやってくれという状況になるまで残念ながら歳出を徹底的にカットしなければならない」と言っているわけです。ここでははっきりとは書いていませんが、増税の話をしたら選挙に負けるからというのがこの話の裏にあります。ここにもちょっと書いてありますが、「首相はヨーロッパをみると野党が増税を提案するようになっていると欧州の消費税をめぐる議論を引き合いに出し」、2006年6月ですからすでに小泉さんはこのあたりまで全部読み込んだ上で色々なことをやっていたということがこれから読み取れるわけです。それと同じ権丈先生が2007年に書いた本で同じことを書いていまして、「歳出削減はいつまで続くのか、今みたいに医師不足も続くし、勤務医に過重労働を強いるような状況はいつまで続くのか」と権丈先生は本の中で「この国の有権者は増税しようとすると政治家をひどい目にあわせる、すなわち政治家は落選してしまうという強いくせをもっている。増税できないとなれば昨今の財政事情を考えると、歳出を削減するしか方法はないのだということは子供でもわかるではないか。その際、彼ら政治家にとっては歳出削減につながることを発言してくれる経済学者は、とても重宝する。ゆえに彼らを徴用する、ただそれだけのことである」と言っています。まさにここに集約をされているということが言えると思います。

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 そして、我々の身近な人で増税を言う人はいないのかと思っていたら、京都大学の経済学部の西村周三教授が社会保険旬報の2008年1月1日号でやはり言ってくれていました。ようやく身近な人でもこういうことを言ってくれる人が出てきたなと思いました。「増税を言わない政治家の責任」と書いてありまして、「厚生労働省に若干同情的な話をしますが、それは政治家の責任だと思うのです。今の社会保障費を増やすことができないのは、答は簡単で、増税しないからです。そのことの重要性を誰もはっきりと言わない。99%の政治家が今まで言わなかった。それが今手遅れになりかかっている原因です」とはっきり言ってくれているわけです。実際のところこういうことを言う人はほとんどいませんで、「おそらく厚生労働省がどけちなことをやっているのだろう。」とか、「医者をいじめて喜んでいるんだろう。」とか、挙げ句の果てには「財務省がうしろにいるのではないか。」とか、こういうことばかり言われていますが、実は本当の相手は誰かというと、増税を潜在意識下で否定している国民とマスコミということになります。国民の気持ちの中に、税金というのは国民の義務としてきちんと認識されていず、しかも税金を上げようとすると税金を上げるイコール悪だというような風潮で洗脳されてしまっている日本の国民というのがいるわけです。さてそれで、先々週にその講演をしたときに国民の声を医療制度に生かすにはというテーマで話して下さいと言われたのですが、国民の声を医療制度、つまり国民ももう悲鳴をあげているはずだから、そうした声を受けて医療人も助けるような医療改革をして下さいという意味でおっしゃったので、「すみません、先生方、実はこんな話なんですよ」と言ってこの新聞を出したのですが、ある新聞社が平成19年11月に出したのですが、彼らが世論調査をすると、増税で社会保障反発という話になるわけです。マスコミのこういった調査やアンケートというのはある程度自分たちの会社の意向というものが相当盛り込まれているわけですが、こういう新聞社にとってみると増税で社会保障というのは悪なのでしょうね。仮に増税せずに社会保障を充実させようとすると何があるかというと、例えば防衛費を全部削るとか、道路も新幹線も空港整備も全部やめるとか、そういった乱暴な意見しか出てこないと思うのですが、ともかくも平成19年11月5日にはこういう状態です。一方の肩を持って一方をほめるわけではないのですが、ほぼ同じ頃に読売新聞社がやった同じようなアンケートでは、増税賛成というのが結構いるわけです。同じアンケートをしたはずなのになぜ新聞社が違うとこう変わるのでしょうね。

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 それで改めて言えば、ここまで申しましたように、当面は節約しか我々役人には残っていないということです。政治の世界で決まってしまいましたし、与党も野党も増税で社会保障をやろう、来るべき高齢化社会を乗り切ろうという人はまだまた多数派ではなく、しかし道路は造ろうという人はいるということがわかりましたので、とにかく当面は医療費抑制策をとらざるを得ません。
それからここで私ども医政局のやっている施策に絡めますと、医学部の定員のコントロールを相変わらずやっています。もちろん全国で395人の枠を増やすということをtoo little, too late かもしれませんがやり始めるわけですが、それにしても医学部の定員というのを相変わらずコントロールしていますし、それから医療計画というのもその本質は総需要抑制と申しますか、総病床数を規制することによって医療費を適正化しようということですから、経済学的に言うと供給者誘発需要、サプライヤー・インデュースド・ディマンド(Supplier induced demand)という理論に基づいてやっているわけですが、これも医療費抑制策の一つとして病床規制、医学部の定員抑制ということを続けざるを得ないし、得なかったということです。ですが、いつの間にか気づかれないようにというか、そっとなのかわかりませんが、今申しましたことの繰り返しになりますが、395人の医学部定員を増やすということではなんとか政府与党内のご理解を頂くということになります。

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 それからこの話もしておきましょう。私のような木っ端役人がこんな高邁な話をしてもいけないのですが、非常に面白い話なので、塩爺(しおじい、塩川正十郎氏)が母屋でおかゆをすすりながら離れですき焼きを食っていると揶揄したことがありましたが、この図式は変わっていません。そこで最近こんな面白いのがあったので書いてみました。Yahoo!のベストアンサーに選ばれた答がこんな感じでしたから、やはり日本のレベルってどうなのかなと思った次第です。「今まで官僚どもがその存在を隠してきた年間240兆円もの特別会計が表に出てきましたね。こんなものは国会の力でいったん国会議員の目の届く一般会計にまわせば良いのです。この金を一般会計にまわせば国債を発行しなくても済むはずです」とか書いてあるので、これがベストアンサーに選ばれていて悲しいなと思ったのですが、たぶん特別会計が225兆円ということを言っているのでしょう。中身をよく見てみると、社会保険関係の特別会計や国債整理基金特別会計のような言ってみれば口座を借りているようなものがほとんどで、本当にいじれる部分、つまり節約でなんとかなる部分というのは限られているということになります。中川秀直さんなどは平成19年12月6日頃に40兆円あるとか言っているようですが、だいたい少ない人で20兆円、多い人で40兆円くらいは削減すればなんとかなると言っているようです。

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 いずれにしても最近私が思うのは、役人がこういうことを言うと非常に自虐的なのですが、役人の活躍できる範囲、あるいは役人の選択肢とでも言いましょうか、わかりやすく言えば権限が非常に狭まっています。そして役人以外にも学者もいるかもしれないし、政治家もいるかもしれないし、マスコミも国民もいるかもしれませんが、そういうプレーヤー達を見てみますと、最近サッカー日本代表を思い出す今日この頃です。私はサッカーを観るのもするのも苦手なのですが、アジアカップというのが1年くらい前にあり、それを観ていたのですが、非常に腹が立ってきました。それはなぜかというと、誰も決定力がなくて誰かが打つだろうと思っていることです。誰だってゴール前にきたやつは打てばいいのですが、パス回しばかりやって、パスが自己目的化しています。つまり、役人は役人で考えをまとめるのですが、最後は政治家に任せます。政治家はおいしいところはとるけれども、本当はどうなのかというようなところはやりません。みんなこの日本代表みたいな状態になっています。そう思っていたらこんな本がありました。『日本人はなぜシュートを打たないのか』という文化論まであるくらいだったのですが、ことほど左様に社会全体にこういう空気が蔓延しています。

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 それでもやれることはあるわけです。私は最近国公立病院、あるいは公的病院の病院長さんには常々言うのですが、国に頼らなくてもやれることはありますとくどく言います。それは、年功序列の給与体系というのは古い慣習ですから捨てて下さいということです。国立病院に関しては機構になりましたし、それから地方独法になったとことも増えてきましたね。年功序列の給与体系というのは国の直営、地方の直営だった時代の名残ですから、相当なところで能力や労働力確保の困難性に着目して給与が変えられるはずなのです。診療報酬と給与のリンクも、難しいのですがやればやれるはずです。制度的にはやれるようになってまいりました。固定した就業形態の見直しもそうです。例えば、看護師さんではあるはずの3交替制が医師では実現していなくて、医師で3交替制などできるはずがない、3交替などをやったらそのために人がたくさんいるという声が出てきます。それから、国公立ではできるわけがないとおっしゃっていますが、私どもが知る限りでも、例えば昔の国立療養所下志津病院が独法になって、産科で3交替ないし変則2交替制をやっていると聞いていますし、それから藤沢市民病院でも同様なことをやっていると聞いていまして、機構のような組織になったところは病院長さんと事務長さんの裁量でやり始めています。それから大学でも有名なところは山形大学が、私も正確には聞いていませんが困難な手術をすると1000円単位だったと記憶していますが、困難な手術や難しいことをしたときには手当が出るようになっています。それから最近は産科医が不足してきたということで、分娩手当を出す病院が相当増えてまいりました。病院長や事務長さんの話を聞きますと、たとえ少額といえどもそういう手当を出すことで、個々のお医者さんのモチベーションというのはものすごく上がるそうです。こういうことは国が決めているわけではありません。出してはいけないと昔は言っていたのですが、今は出せるのですが、そういうことを知らないか、面倒くさいと思われるか、あるいは他の診療科とのバランスを気にされるのか、つまり産科だけ優遇するわけにはいかないとか、小児科だけ優遇すると他の診療科から文句がくるかもしれない、ということが心理的な障害が出てできていないということです。それで例えば3交替制や、今申しました短時間労働制、例えば国直営、相変わらず自治体直営の病院、そういうところも人事院が平成18年7月に法律改正をしてくれまして、短時間労働についても、例えばコアタイム就業みたいなものについても常勤にしてくれるということで法律改正までしてくれています。それから、医療補助者、医療事務員の配置などもすでに着手しているところがあるようです。もちろん診療報酬でも少し評価をしてくれるということだそうですから、こういうことは国に頼らなくてもかなりできるようになっています。それから、済生会や全社連のようなところは各病院の主体性というか、独自性というか、裁量が大いに拡大されていますから、もう一度見直していただくとこういうことがやれるというわけです。

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 公立病院改革の動きを説明している時間はありませんのでポイントだけいきますが、おそらく夕張の破綻が公立病院改革のきっかけだったろうと思います。日本全体で見てみると、実は公立病院の運営にかかる収支というものが広く薄く日本の自治体の経営の足かせになっているということがわかってまいりました。その中の一つは連結実質赤字です。そこで、一般会計と特別会計とを連結にして出します。それから借金をいっぱいしていても実額だけに目をとらわれると夕張のような小さい市ではわからないので、予算全体に占める公債の比率を明らかにしろということになってきましたので、借金経営をしている自治体にとってみると、その借金経営、あるいは特会で赤字を作っている自治体にとってみるとこの辺があからさまに表に出てくるようになりました。これが地方公共団体の財政の健全化に関する法律ということで、やはりこれも平成19年7月に成立しています。
 時間がなくなってきましたので結論だけ言いますと、平成19年12月に公表されたのですが、行き着く先は自治体ごとに改革プランを策定して経営の効率化をやって下さい、経営形態の見直しも考えて下さい、例えば、指定管理者や地方独法とか、PFIは今評判が悪いですが、そういう動きも加速するかもしれません。そういう意味で公立病院は意外なところ、つまり地方自治体の財政の健全化という意外なところから火が付いてしまって今後色々と考えなければならないということです。
 短い時間でたくさんのことを盛り込みましたが、要するに医療費の財源が確保できない理由が何なのか、今後どういうふうにしていけば展望が開けるのか、増税みたいなことを誰がどういうタイミングで切り出すのかというところが一番重要なところかと思いますが、当面は節約とか効率化というようなキーワードで堪え忍んでいかなければならないだろうという、年頭にしてはやや暗めの話になりましたが、そういうことでまた先生方から、あるいは今日お来しの皆様方からまたご意見を頂戴できればと思います。ご静聴ありがとうございました。