「国民が求める“よい医師”養成のため
 にある新医師臨床研修制度の成果」

       
財団法人医療研修推進財団
第11回講演会より

NPO法人卒後臨床研修評価機構
専務理事  岩 ア 榮 先生

 


                 

 (司会)それではまず、NPO法人卒後臨床研修評価機構専務理事の岩ア榮先生に「国民が求める“よい医師”養成のためにある新医師臨床研修制度の成果」〜医療研修推進財団の貢献〜と題しまして、ご講演をお願いいたします。岩ア先生のプロフィールにつきましては、お配りしました講演者のプロフィールをごらんいただきたいと思います。それでは岩ア先生、よろしくお願いします。
(はじめに)
 皆様こんにちは。ただいまご紹介を受けました岩アでございます。本日は早速ではございますが、「国民が求める“よい医師”養成のためにある新医師臨床研修制度の成果」ということで、特に本推進財団の貢献についてお話をしたいと思います。前半には少し医療研修推進財団がどのように研修制度と関わってきたかという歴史的経緯をお話しようと思います。第二段目は私が長崎におりましたときに特に離島の医師の養成に臨床研修がいかに役に立ったか、そして長崎県は今でも医師不足ではありますが、その当時から医師の養成について、そして医師不足をどのようにして克服してきたのかという話をしたいと思います。それから、第三段目、最後ではありますが現在の新医師臨床研修制度の評価を私が立ち上げました高久先生が理事長でございますが、NPO法人卒後臨床研修評価機構というのがございますが、その中で57の病院がすでに認定を受け、その成果についてお話をします。そして現在研修制度の見直しが行われていますが、そのことに対しての意見を申し述べたい。このような三段階でお話を進めさせていただきます。
(医師研修制度と財団の貢献)

  早速ではございますが、医師研修制度の歩みと本財団の貢献という話で、これはもうご存じの通り昭和23年にインターン制度が導入されて、その後から20年を経て新しい制度が努力義務として、これを旧制度と呼んでおりますが、旧医師臨床研修制度が創設されました。そして、昭和48年にこういったいろいろのプライマリーケア研修のすすめとかが審議会から出されています。
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 そして今回の新臨床研修制度に移行したということでありますが、その移行する36年の間に、プライマリーケアの研修ということを重視した建議書など報告書が出ているわけであります。そして昭和49年には第一回の医学教育者のためのワークショップが開始されました。通常われわれは「富士研」と言っておりますが、7泊8日の厚生省(現厚生労働省)、文部省(文部科学省)の共催でしたが、第二回は高久先生と私も一緒にこのワークショップに参加しました。日本の医学教育を大きく変えていくドライブの一つとなったと私は思っております。その後も引き続いてプライマリーケア修得の必要性というのが医師研修審議会の日野原先生がこのとき会長をなさっておりましたが、こういう建議書が審議会から出ております。 また、医務局長通知で昭和53年には審議会の報告書を受けて「プライマリーケアを含む臨床研修の意義について」というようなことが出されているわけです。そして1983年、昭和58年ですが「臨床研修研究会」、今の臨床研修を大きく引っ張っている一つの研究会、現在は「臨床研修協議会」というようになっておりますが、現国立国際医療センターに事務局をおいてこれが今日にいたるまで発展してきているわけでございます。

   一方、国立大学協会においても平成2年、1990年に「大学病院における卒後臨床研修の改善」を提言をしております。
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 こういう提言を受けて、平成6年に医療関係者審議会で「臨床研修の必修化」の提言がこのときに初めてなされております。その翌年(平成7年)にこの財団が設立されているわけです。そういう意味で臨床研修との深い関わりの中でこの財団が設立されたものだと思っています。設立当時から私も理事をさせていただいております。その翌年(平成8年)第一回の本財団主催による『臨床研修指導医講習会』、先ほどの猿田理事長のご挨拶にありましたように指導医講習会が開始されており、当初は4泊5日で行われました。これが大きく全国普及に大変貢献したのではないかと思っています。先ほど述べました臨床研修研究会がこの事務局の中に移されて、いろいろなガイドブック等の発行に寄与したことは皆さんご承知の通りだと思います。臨床研修のいろいろな情報提供システムの運用を開始しておりますし、必修化の準備をするための調査も行われております。 (36年もの議論の末、新医師臨床研修制度は誕生)    

  ここで大変重要でありますが、私の今日の演題のテーマはここからいただいているのですが、第150回(国会)参議院国民福祉委員会付帯決議(平成12年11月)というのが出されております。                    
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 この付帯決議のことを今忘れて論議が行われているというところに大変問題があるのではないかと私は思っているわけです。平成12年11月医師法改正並びに医療法改正が行われてここに臨床研修の必修化が行われました。従って唐突として必修化がなされたわけでは決してありません。大変長い間の議論、36年間の議論というように言われていますが、国会においても相当の議論をしてこういう付帯決議が出るほどに実は必修化はかなりの議論の末になされたわけであります。そして厚生労働省においてはこの年(平成12年)に省令を施行しております。財団は平成15年度に「臨床研修マッチング協議会」を設置しました。いわゆるマッチングシステムの事業の始まりであるわけであります。そして平成16年に実際に施行され現在に至っているわけです。この年(平成16年)にすでに本財団では「臨床研修プログラム責任者講習会」として1泊2日の講習会をやはりワークショップ形式で開始しております。この開始と同時に先ほどの指導医講習会は全国に普及したこともあって、財団としてはこちらの方の講習会に移行していくことになるわけです。そして昨年(平成20年)4月に臨床研修に関する省令の改正が行われたところでございます。先ほど申しました臨床研修協議会は、国立国際医療センターの中に事務局が置かれてこういうような経過を経て今日にいたっております。
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 そして、第一回が国立国際医療センター戸山病院という名称に現在はなっていますが、幹事病院として第一回目を開いていて、今年(平成21年)は第27回(JA長野)厚生連の佐久総合病院が担当で4月11日に東京で開催が予定されております。

 (マッチング制度に参加者は満足している)
  マッチング制度について少し触れておきたいと思います。こういうマッチング制度というのはこの財団の中にあります「医師臨床研修マッチング協議会」というのがございます。この会長は行天先生でございます。マッチングというのはこういうように定義されています
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 これをしばしば誤解されている方がいらっしゃいますが、『医学部を卒業して臨床研修を受けようとする者と参加病院と、両者の選択および希望を考慮した上で透明性を確保しつつ一定の規則に従って公平かつ効率的に組み合わせるシステム』となっていて、先行するアメリカ等においてはマッチングにすべての研修希望者たちが参加することが、このマッチングを良くしていく術だと述べております。参加の利点としてこういうことが述べられております。『自分のキャリアデザインに基づいて、全国の多様な研修プログラムの中より自分の意志と』、ここが大事だと思いますが、『自分の意志と実力に基づいた選択が可能である、参加病院は臨床研修の質的充実に見合った優秀な人材の確保が可能である』、というような利点に基づいて今のマッチングが行われているわけです。
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 そして、若手医師の全国分散、人材流動化促進というようなことも利点というように思っています。マッチングの参加者のアンケートが当財団でなされていますが、合理的な方法とルールによる結果なので納得、というのが14%ありますが、それも含めて98%の人が満足しているという結果になっています。
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(指導医講習会の成果)
  医療研修推進財団の臨床研修に関わる事業としてはいろいろな事業が行われておりますが、先ほども述べました指導医講習会は大変好評であったわけで、この修了者が1800名であったわけです。平成16年からは盛んに全国で行われております。今2万人以上が指導医講習会を受けたという報告がございます。私自身も指導医講習会に関わっており、私自身の手で行ったのは4000人をすでに超えています。それからプログラム責任者講習会は平成16年から現在まで続いておりますが、平成21年1月末現在で修了者は1472名、こういう人たちが日本の臨床研修を引っ張っていっている指導医たちでございます。それ以外にこういうガイドブックやそういうものを当財団は作成し配布しておりますし、インターネットでもこういうことを公表しているわけです。
  (財団発足10周年記念の各人の言葉から)
  平成17年11月30日に財団発足10周年記念というのが行われました。ご存じの通りですが、その中に寄稿された先生方がいらっしゃいますので、その先生方のお言葉を紹介したいと思います。もう覚えておられない先生方もいらっしゃるかもしれませんが、高久先生は「マッチングの導入は今回の卒後臨床研修必須化の重要な焦点の一つであり、新しい卒後臨床研修システムの発展に財団が果たした役割は極めて大きなものがあった。」ということを言っています。阿部先生もお見えでございますが、臨床研修の充実につきましてはということで「この財団でもいろいろなことがあって、医療の質の向上に寄与すべく職員一同心を新たに一層の努力をしてまいる所存でございます。」というような文を寄せておられます。元医事課長の今田さんは「私にとって医師の臨床研修必修化の取り組みと当財団の設立は因縁の取り合わせとして深く心に残る出来事であった。」というふうに感想を述べております。また、尾島先生は我々医学教育の祖と言われる人物でございましたが、お亡くなりになりましたけれども寄せておられた言葉は「研修医はマッチングのいわゆる医局支配下より脱し、研修医が自ら考え始めた。今後の課題として指導医やプログラム責任者の教育訓練の評価などは新制度の文面にあまり述べられていないが重要な点である。」ということを言い遺しておられます。川口教授は「地域保健医療が入ったことを非常に歓迎する。」木下牧子院長は「研修医に求められるものは、すなわち全ての医師に求められているものである。」と言っておられます。行天先生は「一生続く研鑽のスタートとして真摯に期待したい。」という期待感を述べておられて、初代の理事長の末舛先生は「医師研修推進財団のすべき巨大なプロジェクトが目前にあります。これは大学依存だけでは不可能のように思います。」それから当時は東大の病院長であった永井良三先生は「より良い研修制度を作るのは現在の指導者たちの課題であり、果たすべき責任と言えます。」それからこの方も元医事課長でありますが、中口さんは「医師が不足していると感じられる場面が多いことは医師の行き過ぎた専門化によるところも大きい。」とこういう意見を述べておられます。それから健政局長であった中島さんはこういうことを言っています。「マッチングシステムを我が国でも導入することが大学関係者から提案されました。」実はマッチングシステムというのは大学関係者から提案されているということがわかるわけであります。それから「大学の医局任せ、他人任せであったものが自らが選び選ばれるという緊張関係の中でその職場、人材を選択していくという本来の姿が実現していくことになるであろう。」ということを予測されておっしゃっております。現在でも指導医講習会やすべての全国のワークショップ等に活躍をしておられる畑尾先生は「臨床研修は必修化され、医療はより良い方向へと動きを加速させるであろう。そこにPMETの果たされた役割の大きさには計り知れないものがある」この財団のことをPMETと普通我々は言っています。この前まで医政局長をしておられた松谷先生は「臨床研修必修化は、今となればこんな当たり前のことをどうしてもっと早くできなかったのかと問う人がいても不思議ではない。」というような感想を述べられて、「何よりも医学生の知的レベルが高く、皆が状況に的確に対応できたために考えられ、熱い頭の先輩と対照的に今の医学生の頭はとてもクールなのかもしれない。」こういういろいろな意見も述べられ、さらに矢崎先生は「大学病院を中心に専門領域に偏っており、幅広い総合的な診療能力を修得できるよう一般臨床研修病院も積極的に役割を分担」ということを述べられて、「財団のホームページのアクセス数も217万に及び、医学生や研修医で唯一知らぬ者はいないという知名度抜群の財団になりました。」ということを述べています。今までこういう諸先輩がおられてこの臨床研修制度はこの財団と共に今日を迎えているのではないかと思います。
(期待される医師像、臨床研修の意義、すべての病院、施設が研修病院、研修施設となり得る)

 新医師臨床研修制度の誕生前の議論を少しまとめてみました。期待されている医師像として昭和63年3月に卒後臨床研修部会から医師像が示されました
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  こういう経過を経て実は新研修制度ができてくるのですが、さらにこの研修部会では研修の意義として「幅広い臨床実務を経験し、医学部で学んだ基本的知識、技術、態度を体験させ、温かい人間性と広い社会性を身につける」このような意義を研修部会では出したわけであります。
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  さらに、最終報告が臨床研修機能小委員会最終報告として平成4年6月10日に出されておりますが、この中で研修病院・施設群構想の導入というのが出されております。これによると大学病院や研修指定病院のみではなく関連施設、専門病院、中小病院、診療所、こういうところにも研修の場を広げることを認めて、それを取り入れる必要があるということをこの最終報告では述べているわけです。
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 こういうことで今日の研修制度が義務化されているということを私どもは再認識する必要があるとして、述べたわけであります。
(長崎県離島での医師不足にどう対応してきたか)−臨床研修の役割−
 これから第二段目に入りたいのですが、長崎県における離島の医師不足対策に臨床研修がいかに役だったかという話をしたいと思います。私は臨床時代は長崎におりまして、大学から国立病院に出る寸前から長崎県における離島医師の問題に関心を深めて、国立病院に行って離島医師の確保対策を推進すると同時に、私自身もそれに専念したという話であります。別に私の自慢話をしようと思っているわけではございません。ここでは、医師不足を解消するためにはこんなに時間がかかるんだ、努力がいるんだということを皆さんにおわかりいただければと思っています。

 昭和45年に医学修学資金貸与制度というものを長崎県では始めました。そして昭和47年に自治医科大学の開校と同時に自治医科大学へ医学修学生を送り出しました。さらに昭和50年には離島医師センターいわゆるドクターバンク制度を作ったわけであります。昭和51年になりますと国立長崎中央病院(現在の国立病院長崎医療センター)においてスーパーローテートによる臨床研修を開始しました。
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 すでに私は、昭和44年に国立病院に赴任しておりました。国立長崎中央病院で何を私がしたかというと、地域医療確保のために各種の研究・研修をやったわけであります。修学生の夏季研修、自治医科大学に入学させたり、または北里大学に修学生を送り込んだりしました。学生たちに夏には帰ってきていただいて、必ず「地域医療計画ワークショップ」に参加させて地域医療への関心を高めるということをやっていました。
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 このワークショップには高久先生にも当時来ていただきました。高久先生を初め自治医科大学の教授の先生方、その他沖縄からは真栄城先生、佐久病院からも応援してくださいました。このワークショップは離島で行うということが一つのみそでありました。その他、離島医師研究会を立ち上げたり、研究成果を国際学会で発表するという機会も、これら修学生、または自治医科大学の学生たちにも与えられました。
(ジョン・フライの言葉は現代にも通じる)

  その当時、ジョン・フライという人がプライマリーケアという本を出しました。この本の中にプライマリーケア、今でも通用する言葉でありますが、「地域医療は常に回答不能の公式」に直面している。
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  つまり、「住民の欲求というのは必要性(ニーズ)より大きく、それに見合う資源は非常に少ない」。こういう不等式を解くのが地域医療の問題である。これはまさに今の医師不足の問題にしても全く同じ考えが成り立つのではないかと思います。この不等式をいかにして解くかというのが、今後の課題にして重要なことだと思っています。先ほどの地域医療ワークショップで学生たち、研修医たちと一緒に「地域に望まれる医療人の条件とは」という課題を与えそのプロダクトを作り上げていくということをやってまいりました。そのプロダクトには、幅広い医療に対応しうるとか、すべての救急に対処する、地域医療へ積極的に参加する、意欲を持ち実践する能力を持つ、地域医療機関とスムーズな連携を持つなど当たり前のことではありますが、こういうことを学生時代から身につけてもらうというねらいでこういうワークショップをしたわけであります。
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 (先ず離島では救急医療から着手)
   まず、離島医療の問題解決のために私どもは救急医療に着手いたしました。救急医療に着手する前に県に対して全ての有人島、人が住んでいる島にはヘリポートを作って欲しいと要望しました。当時の知事はそれを受け入れて3年間の間ですべての有人島にヘリポートを作っていただきました。そういうこともあって私がおりました国立病院は航空自衛隊があったことも幸いしましたが、航空自衛隊にまずヘリを飛ばすということで要請をしました。現在でも24時間体制で昨年度(平成20年度)は110件搬送しています。昨年(平成20年)、一昨年(平成19年)からドクターヘリが長崎県では導入されて、ドクターヘリがやはり活躍をしています。県の防災ヘリもございますので、こういうようなことで離島の医療の救急はほとんどが親元病院、つまり私がおりました国立長崎中央病院と当時は言っておりましたが、現国立病院長崎医療センターで医師たちが添乗していくということであります。
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  これについては面白い話があるのですが、実はこの当時国立病院の医局会でヘリに誰が乗るかという話で当時副院長をしていましたが、皆さんと諮ったら「歳をとった人から乗れ」という医局会の決議をいただきました。一番年寄りは院長でしたが院長を毎日乗せるわけにはいかないということで、次は私でございましたので、私がほとんどその当時ヘリに添乗したということがございました。それでというわけではございませんが、国立長崎中央病院当時の臨床研修到達目標をこのように定めました。
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 プライマリーケアに対処するとか、救急医療を身につける、チーム医療、こういうことを現在でも一般的に言われているようなものを目標に立てたわけであります。
 そして、さらに臨床研修採用時面接におけるチェックポイントというものを作りました。
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 この中にヘリコプター添乗可否というのを作って研修医の採用面接をしました。そして、添乗できるという約束をして研修医を採用して、その年から私があまり乗らないで済むようなことになったわけであります。そういういきさつで作ったチェックポイントでありますが、もちろん離島の巡回診療とか、一定期間離島病院での研修が可能であるかとか、ローテート研修に対する理解度とか、社会的適合性があるのかとか、こういうことを研修医の採用時のチェックポイントとして研修医を採用する。そういうことによって離島には必ず行くんだという約束の下で研修医を採用しました。次には医師の教育研修制度をさらに充実させるために、先にも述べたように6年間の医学教育期間中には、夏季研修に必ず参加させる、初期研修2年間はスーパーローテートである、それから離島に1年間、さらに国立病院に戻して1年間、さらに3年間の離島の勤務をして、再々研修で1年間して、後の義務年限を果たしていただくということです。
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 私どもは初期には彼らを離島に出向させた時には必ずどこの病院にでも指導医がついて行くということで、ペアで研修をするということを昭和51年の時代から考えて実行しました。
 こういうことを経て今日長崎の離島医療の現状がどうなったかという話でございますが、実は私が始めた当時はこの程度の常勤医師でありました。40人足らずでその当時の離島の全部の島でこの程度しかおりませんでした。現在は、なんと100人以上の医師が育ってこの人たちが今離島の医療をになっているわけでございます。これには自治医科大学や離島医療圏組合の医学修学生らとその修了生によって支えられているわけであります。ところが、五島地区の人口はかなり減少したにも関わらず医師の数は増えたということで、私どもが昭和40年代、50年代に一生懸命医師を育てて、ようやく現在は100人以上の医師たちが離島でがんばってくれているわけであります。
 長崎県は、実は全九州を網羅するくらいの広さでございます。関東圏と同じくらいの広さにもなるわけであります。現在、離島僻地医療支援センターというのが県を中心としてできております。最近になって、ようやく重い腰を上げて長崎大学がここに医局医師を出し始めてくれました。離島僻地医療学講座というのを作って、ようやく大学も目覚めてくれました。こういうことでなんとか長崎は医師不足ということがあまり話題とされない状況になってきております。

   まとめますと、長崎県が医師要請システムを構築して40年間で離島医師の43%を自前で保有することができるようになりました。病院単位で医師不足の場合、長崎県に所属する医師の移動で充足できる、離島の僻地よりの医師要望にほぼ100%応えている、こういうことで長崎県医療の親元病院である国立長崎医療センターによるドクターヘリによる救急体制、医師要請への全面的協力で成り立っているということで、これだけの努力をしなければなかなか医師不足というのは解消していかないという話しであります。
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 今でも(医師不足は)実は解消していないわけでありますが、当時の離島における医療問題解決への提案、実は昭和60年に厚生省(現厚生労働省)に、僻地保健医療検討委員会というのがあり、当時私が座長をいたしました。このときに点的視点から面的解決への方向をこの委員会で提案をして、こういう報告書を作っているわけであります。
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 そういう報告書がようやく長崎県では実りました。今年(平成21年)4月の予定でありますが、これは長崎県からお借りしたものですが、長崎県病院企業団としてこれだけの県立病院、離島病院そういうものを網羅してすべてを点から面へ移してこういうものを立ち上げようとして、今長崎県は市町村を入れてこの企業団の設立に向けて進められていますが、おそらく予定通りにいくのではないかと言われております。
(医師確保成功の鍵は?)
  私の感想ではありますが、離島の医師確保成功の鍵は、医師不足対策の目標を設定したこと、それから医師研修制度の活用による医師の養成、それから門閥や学閥にとらわれない人材の確保、当時から私は大学人事に頼らないということをモットーとしておりました。医学修学生制度の活用、周到な研修体制、全人的に対応できる幅広い医療に対応できる研修制度を確立して、離島の医師の確保に務めたという、これが長崎県の医師確保成功の鍵だと私は思っております。医師不足対策は永遠の課題であり、医師不足解消に王道はないと私は思っています。長崎に学ぶ医師不足対策、それは臨床研修の地道な歩み、臨床研修の制度を大いに利用して今日の医師ができたんだと思っています。
(評価なくして改善はない)  

 そこで最後の話でありますが、(NPO法人卒後臨床研修評価機構)というのを高久先生を理事長として立ち上げて今日に至っているわけであります。
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 この法人の目的でありますが、「国民に対する医療の質の改善と向上をめざすため、 臨床研修病院における研修プログラムの評価や研修状況の評価を行い、 臨床研修病院のプログラムの改善、よい医師の養成に寄与すること」です。
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 この評価の視点でありますが、評価の視点は実は先ほど最初に申し上げましたこの臨床研修制度が義務化される直前にこういう付帯決議が国会でなされております。平成12年11月、この後すぐ義務化の法律改正が行われるわけでありますが、この中で素晴らしい言葉が書かれております。「医師および歯科医師の臨床研修についてはインフォームドコンセントなどの取り組みや人権教育を通じて医療倫理の確立を図るとともに精神障害や感染症への理解を深め、さらにプライマリーケア、僻地医療への理解を深めることなど、全人的総合的な制度へと充実すること」ということでこの付帯決議をしています。
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 これを私は国民が要請する、社会が要請する医師像だと思っております。人格の寛容、社会人としてのマナー教育、全人的医療の研修、チーム医療、こういうものをきちんとやって下さいということで、国会決議が行われているわけであります。そういうことを今の国会の方々はご存じなのでしょうかということであります。

 評価の視点としては私どもはこういうまさにプライマリーケアの基本的診療能力を身につけられるようなプログラム、いわゆるカリキュラムになっているかどうか、基本的な姿勢態度が身につけられるようなプログラムになっているか、こういうことを一つ一つ研修が実際になされているかどうかを評価するということであります。
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 それから視点の三としては安全管理、法令遵守、日常的な疾患と稀な疾患とは七対三くらいで日常疾患を7くらいで、経験をさせると良いのではないかというように考えております。
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 それから研修医の数に見合う指導医の数、むしろ指導医の数に見合う研修医の数、どちらでも言えるのですが、そういうこととプライマリーケアの指導能力を持った指導医がきちんと指導するというようにしているかどうかということを評価の視点にしております。それから地域医療の連携、地域医療への貢献度であるとか、クオリティ・インディケーターへの取り組み状況であるとか、そしてアウトカムの測定がその病院ではきちんと行われているかどうか、そういうものを評価の視点としているわけです。さらに、評価のポイントとしてこのような研修(学習)のプロセスと言われますが、そういうものがきちんとRUMBAの原則を満たしているかどうか、そういうこともプログラムを見る場合にこういう視点に立って評価をしているということであります。

 こういうことで評価項目の構造は、3階層構造になっていて、中項目で評価をし、適切、要検討、要改善というように評点する。
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 8個の大項目、27個の中項目、そして88個の小項目、このすべての評価項目合わせて123項目になっています。最初のPg.1では理念や基本方針が研修病院としての理念や基本方針が明示されているかが問われることになります。Pg.2では研修体制がどうなっているか、つまり、研修管理委員会があり、その委員会の委員の構成などについて問われます。 Pg.3では環境整備、いかに研修医たちをサポートする設備が整備されているのか、安全管理体制はどうなっているか、感染管理がどうなっているか、相談窓口がちゃんとあるかというようなこと、研修をサポートするためのいろいろのインターネットの設備がなされているかどうか、それからPg.4ではマッチングをきちんとやっているかどうか、Pg.5が一番重要でありますが、プログラムの確立というところで、きちんと周到なプログラムがプランニングされていて、立案された方略通り研修が実際になされているかということを一つ一つ的確に評価をすることにしております。それから、Pg.6というところは研修医の評価をするところであります。Pg.7というのは指導医を評価する項目になっております。最後のPg.8とありますが、これからの研修病院は終了後その人が生涯にわたってどういうふうな方向に成長していくのか、そういうのを見守るということでの評価で、Pg.8というのを設けました。これらの中でもっとも重視しているのはカルテの評価であります。当然のことであります。研修医評価は研修医の記録を見ればわかるということで、指導医からチェックを受けているかどうかもチェックします。
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 現在まで57の病院が受診してくれておりますが、この中で症例レポートの達成割合を調べてみたところでありますが、またレポートが出されておりますが、1年次での達成割合は低くて、二年次でようやく達成するということからしますと、研修期間は2年は必要であるということであります。
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 さらに調査票での設問のところで、9-4-4という設問でありますが、研修医1人あたりの88疾患というのが目標に定められておりますが、その達成割合はどうだったかというと、平均89.9%で70%以上をもちろんクリアしています。これについても、現在の臨床研修制度の示す目標を達成するためにはすくなくとも2年以上必要であるということです。
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 さらに評価項目を詳細に分析すると、この黄色の線で示したのが要検討ということで実は問題がありますというところであります。この問題がありますというところで一番高い率を示しているのは、医療に関する安全管理体制ということです。安全管理の研修が不十分だということがわかるわけであります。この赤で示したのは要改善ということでありますから、直ちに改善をしてもらわなければいけません。目標を達成したというのはこういうブルーで示したところであります。これを見てもわかるように、これは二年間の途中も含まれておりますが、相当に努力して、でもなかなか評価をクリアするというのは相当難しいのであろうと思います。
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 特に拾い上げて、診療情報、カルテの問題でありますが、やはり問題が残されているということであります。それから、安全管理のところで先ほど申しましたが、この9項目81%という要検討が出ている他にいろいろなところで要検討が出ています。患者の窓口相談が未だに行われていないというところもありますし、こういうところをフィードバックをして改善要望を出すことに私どもはしているわけでございます。さらに研修プログラムのところをごらんいただいても、このようにまだまだたくさんの項目で要検討が残っているということがわかります。認定を受けられた病院には認定証を差し上げております。

 (おわりに)
 まとめであります。良い医師の養成という臨床研修の理念、基本方針に基づき、基本的診療能力を身につけることという研修目標を達成できているかどうかを検証するために研修プログラムの評価を行いました。現時点では57病院であります。その結果からは現在の基本科目、内科、外科および救急も含んであります。また、地域保健医療まででありますが、これまで受診した57病院においては必要だとして受け入れられて研修が行われているということで、基本的には今定められている基本科目、必修科目は必要だということであります。まとめの3つ目でありますが、安全管理の研修には要検討と評価された病院が多く、問題が残されております。つまり、このことからも研修の到達目標、行動目標や経験目標というものの達成目標には少なくとも2年間の研修期間が必要であります。基本科目、必修科目のうち特に内科、外科、救急、小児、地域保健医療においては良い研修プログラムが立案され、実際に良い研修が実施されている病院でありました。内科研修は臓器別ではなく総合診療科で実施されているところも散見できました。外科研修プログラムはプログラムのレベルにおいてばらつきが見られました。
 以下は現在行われている「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」に対する私見でございます。より質の高い医師を養成するという観点から検討を行おうとする趣旨に反する検討が行われているのではないかと思います。検討会が医師不足解消のために行われているように見えます。将来の良い医師を養成するという大目標が見失われる検討が行われていて、将来の医師の質の低下、ひいては地域医療の質の低下を招きかねないのではないかとも思っております。研修のあり方は基本理念、目標に沿って決定されるものであって、理念も目標も無視した検討会が行われていることには問題であります。海図なき航海を研修医に強いることになりはしないか、そもそも大学病院の研修医が減少したということだけをもって医学部入学定員増が行われたことには問題があります。研修期間の短縮とか、研修科目の削減が行われようとしていること自体、本末転倒の議論が行われているとしか思えません。大学病院の研修医の応募がなぜ減少したのかという議論はまったく行われていない、研修体制がどうなのか、特に指導体制についてはどうなのか、研修プログラムに魅力がないのではないかと心配しております。
 以上の私見は、私が現在行っています指導医講習会とか、プログラム責任者講習会に参加している多くの指導医たちからの意見を集約したものであるということであります。「安心と希望の医療確保ビジョン」どころか、将来の地域医療にあるのは本当に安心と希望なのでしょうか。

 昨日(平成21年2月9日)出たばかりの週間医学界新聞に載っていた記事であります。ティアニーさん(Lawrence M. Tierney Jr.(カリフォルニア大学サンフランシスコ校 内科学教授) )は17年間に及んで日本の研修医たちを育ててきた人だということです。この人が語っている言葉でありますが、「臨床研修制度を長い目で見て下さい。私の観察では、臨床研修制度導入以前に比べ、導入後の研修医のレベルは明らかに高くなっています。研修制度は継続されるべきです。有能な臨床医の育成には時間がかかります。これは世界各国変わりません。焦ってはいけません。今の研修制度が間違いという意見には賛成しかねます。」こういうことを述べておられます。そこでもう一言申し上げたい。国会の付帯決議はどうなったのでしょうか。国民不在、患者不在の検討に終わらせてはならないのではないでしょうか、というのが私のもう一言です。最後に今回このような講演の機会を与えていただきました財団法人医療研修推進財団、猿田理事長をはじめ関係者の皆様にお礼を申し上げたいと思います。ご静聴、大変ありがとうございました。(拍手)

 (司会)岩ア先生どうもありがとうございました。質問につきましては、懇親会にもご出席いただけるとのことですので、そこでお受けしたいと思います。これから5分間休憩したいと思います。どうもありがとうございました。