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厚生労働省大臣官房審議官 |
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| ただいまご紹介いただきました厚生労働省の大臣官房審議官の中島でございます。平成15年8月まで医政局の医事課長をやっておりました。その際に臨床研修の担当をさせていただいたということについてもご紹介いただきました。その後、審議官になったのですが、担当は医療保険と医政ということで、引き続き臨床研修の問題も担当させていただいているということでございます。本日の話は、この医療保険と医療提供の両方を含めて制度改革についてということです。はじめに、本日お集まりの皆さまにおかれましては、日ごろから厚生労働省行政、特にこの医療研修推進財団のいろいろな事業に対してご理解とご協力をいただいていることを厚く御礼を申し上げる次第であります。私の本日の話については、既にある程度医療制度改革ということでお聞きかと思いますが、私もこの立場になって再度、状況等について自分なりに整理した分も含めてお聞きいただければと思っております。 |
| 日本の医療の現状 |
| 医療制度改革を進めるということを前提として、まず、日本の医療の現状がどのようになっているのかということが問題になります。これも何度も引用されてお聞き及びかと思いますが、WHO(世界保健機構)で世界各国の医療状況を評価したものがあります。どのような観点で評価をしたのかというと、医療に対するかかり易さ。やはり、医療ですから何かあったときにすぐにかかれるということが一番大事だろうということです。また、医療機関の数が十分であるか、入院希望時にベッドが得られるのかというような量的な面があります。それから、そのときの費用はどのくらいかかるのか。費用対効果というような観点もあります。また、重要な点はその際の医療の質がどうかという点など、このようなものを総合して評価をしたということでございます。 |
| そうすると、この表にあるように日本が一番になったということでございます。日本では、米国の医療が良くお手本とされるわけですが、米国はその評価では15位、欧州の諸国においてもこのようなことで、日本の評価が予想外と言うと医療関係者の皆さまには非常に失礼になりますが、世界一ということでわれわれとしても大変喜んだということでございます。 |
| ただ、この評価方法には、当然、ほかの見方もあるのではないかということで、いろいろクレームもついたということもあるようです。その後、WHOとしてはこのような評価はやっていないようですが、いずれにしても2000年の段階ではこのような高い評価が得られているということでございます。ちなみに下の表ですが、健康寿命という単なる長生きをしたということではなく、QOLも含めて評価をすると、これもまた日本が1位になっているということで、いずれにしてもこのような面での日本のレベルは世界的にも評価されているということが言えると思います。 |
| この色の付いたところがこれからお話するところです。日本の医療の現状の中で医療技術の点はどうか、あるいは、自己負担の点はどうか、特徴として医療過誤に対する訴訟が少ないというようなことをお話いたします。 |
| 医療費に関する問題点 |
| これは、わが国での国民それぞれの年代別の1人あたりの医療費の自己負担額です。これは保険料ということではなく、医療にかかったときに実際に各患者が出した費用を、それぞれの保険の加入者の数で割ったものということです。ですから、かかる人もかからない人もありますので、かかる人はもう少し払っていることになりますが、1人平均にするとこの程度ということです。小さいときはかかりますが、その後あまりかからなくなってきて、60代になるとグッと、年間に自己負担が8万円程度です。70歳以上になると老人医療保険制度になりこの程度になるということです。自己負担の額として、現状はそれほど大きなことにはなっていない。このようなことも、先ほどのWHOの評価にも貢献をしているということであります。 |
| そのようなわが国の状況を踏まえると、何が問題かということです。先ほど、評価できる点をいくつかお話しましたが、問題点は何かということです。まず、一番目はやはり医療費の問題です。医療はいろいろな面でコストがかかりますから、そのコストをどこかで調達されなければシステムとして成り立たないわけです。ご承知のように医療費は年々増えているわけですが、その増大が社会的に支えきれるかどうかという問題が一つあります。それに関連して保険料を半分負担している事業者側がどこまでそれに耐えられるかという問題もあります。それから、国の財政も関係しているので、そのあたりはどうなのかという問題。また、一般的な税、保険料を含めた国民負担率という点についてお話したいと思います。 |
| このグラフは国民所得に対する国民医療費の割合が黄緑色の線です。全体の棒グラフの高さが国民医療費を表していて、赤いところまでが老人医療費というグラフです。この間、医療費も国民所得に対する割合もこのような形で増えてきました。2000年では、この割合が8.3%から8.0%に減って、医療費の伸びも納まったのかと思われるかもしれませんが、実はこの年、介護保険制度が導入されました。これまで医療で見ていた分の介護費用が別の介護保険に移ったということで、医療の会計のほうは下がったということになっております。その結果、翌年度からは伸びていて、引き続き同じようなペースで伸びてきているというのが現状です。特に、伸びを見ていると、全体あるいは若人の青いところに比べて、老人医療費の伸びが大変大きいということでございます。 |
| これは、国の財政から見たときの状況を示しています。これは一番新しい平成16年度予算案ですが、一般歳出が47兆6,000億円ですが、そのうちの社会保障費が19兆8,000億円、約20兆円、41.6%、当然一番大きいわけです。ここで注目していただきたいのは、この中の内訳は医療費は8兆円少しとなっておりますが、ここにある公共事業が7兆8,000億円です。去年までは、公共事業のほうがまだ大きかったのですが、今年からこの医療費が一番大きくなって、それを凌駕してしまったということで、今後もこの部分は年金・介護も含めて伸びていくわけです。このように医療を筆頭とする社会保障というのは、国の財政の中で非常に大きな比重を占めるまでになってきているということについて、ご理解をいただければということです。 |
| 次は、この国民全体的な負担から見たときにどのようになるのかということについて良く出される国民負担率のグラフです。この黒いところが税金の負担です。青いところが社会保険料の負担で、それを足すと日本の場合では、36.1%です。これは、ここにありますように国民負担率がそのようなことです。潜在的なということを後でお話しますが、国民負担率+財政赤字を国民所得で割っているということです。ここまでは、36.1%ということで米国と同程度、欧州諸国に比べるとだいぶ低いということですが、実は日本の場合、11.0%が財政赤字、公債に頼っている部分があるということで、ここも含めて最近は財務省では潜在的な国民負担率と言っておりまして、これも含めて議論をしようということになってきております。それでいくと47.1%と欧州諸国にかなり近いところまで来ている状況です。 |
| 医療の質の問題 |
| というのが医療費の部分です。次に、医療の質ということで考えたいと思います。それはどのようなことが問題なのかということですが、これは、昨今いろいろなところで報道をされたり、お茶の間に登場することが多くなってきた医療安全の問題があります。本当によく報道をしていただいているので関心が高いのですが、関係者の方から最近の医療は本当にそれほど安全に問題が多くなってきたのかとよく聞かれます。私は、個人的な経験、印象では、そんなことは決してなくて、最近の医療は以前に比べてよほど安全になってきています。比較にならないほど安全になってきているのではないかと思います。しかし、ジャーナリズムで取り上げられる頻度が高くなっていているので、そのように懸念を持たれるということも事実ですし、完全、完璧ということはないのでさらに努力をしなければいけませんが、そのような印象を持っています。 |
| 二つ目はプライマリーケアと書いてありますが、医療提供のプライマリーケアとして、入り口できちんとした一般的なチェックをしてその上で必要な高度な医療を受けるというステップが、本来必要ではないかということです。いきなり、専門的な部分から入るとそれ以外に基本的なところで病気があり、それを見逃していたということになりかねません。ということで、この辺をもう少しきちんとすべきではないかという議論もあるということでございます。それから、また、医療の質という点で、特に高度医療の質や効率が日本ではどうかという議論があるということです。確かに、いろいろな高度な治療が日本でもできるようになってきました。日本でも専門医が随分できてきていると言われますが、それぞれの高度なレベルが、欧米と比べて本当に十分高いと言えるのかという議論とか、あるいは、それぞれの高度医療の提供がシステムとして効率的にできあがっているのかということが問題になっているということです。その次は、IT技術。また、電子カルテの話もあるようですが、このようなものの導入が遅れていないのかという問題です。最後、経営が十分近代化、合理化されているかというような点、このようなところが医療の質として問題になっているということです。 |
| 医療提供体制、医療情報の提供、技術開発の問題 |
| その次は、医療提供体制のところで問題はないかということですが、基本的なところで救急災害医療の体制がまだ十分とは言えないのではないかということです。救急医療の問題もしばしば報道されるところであります。次に地域とか分野で偏在で多いのではないか。これだけ医師数が増えてきても昨今も名義貸し問題等で出ておりますように地域によっては大変医師、あるいは医療関係者の不足が指摘をされております。あるいは、特定の分野に限ると非常に医師不足という状況は今だにあるわけで、このようなところがなんとかならないのかという問題です。それから、四つ目は医療情報の提供ということで、それも国民が医療を選んでかかるということからすると不可欠ですが、まだまだカルテ開示が進んで来ているとは言っても十分とは言えないのではないかと言うことです。それから、医療の個々の中身について、まだまだよく分からない。それから、経営状態については外からは知るよしもないということで、このようなことについてももっと国民に広く情報提供をしていくべきではないかという議論があります。それから、5番目として、技術開発の問題がありまして、これはわが国でいろいろ導入されているいろいろ新しい技術についてはどうも輸入とか外国技術を持ってくる。製品についてもそうですが、そのようなところに頼っているのではないか。独自の開発というのが遅れているのではないかというような問題点もあるということです。 |
| 現状に至る経緯、背景その1 |
| そのようなことを考えると現状はそうだとしても、どうしてこのようになったのかということが気になります。これを考える一つの道筋として、わが国の医療の発展の歴史というのが一つの原因になっているのかと思えるわけです。これはわが国の保険制度が戦後次第に整備されていく中で、昭和36年に国民皆保険という制度ができあがったわけです。その際に国民全部が入ることになったのですが、医療機関が必ずしも全国津々浦々十分にないということがあって、そのようなことも一つきっかけになって医療機関の設置も民間及び公的も含めて国の急務として進めてきたということがあります。そのような中で、必ずしも全体の計画をきちんと立てて医療機関を整備することにならなかったということもありますし、また、高度成長期に医師不足が叫ばれた中で各県ひとつ医科大学を作ろうということで大学を作ったわけですが、その先の分野の調整をどうするかというようなことも含めて人材育成に関して、その先のプランがなかったということもあるのではないかと思います。また、二つ目は人口構造の問題があります。これはご承知のように少子高齢化と言われておりまして、団塊の世代をはじめ、高齢者人口がこれからますます増えてきて、一方で子どもが少なくなって来るということです。このことは老人医療費の増大ということと合わせて生産年齢人口、現行システムで行けば保険料収入の低下にもつながるわけです。このようなことも昨今の医療を巡る財政状況の厳しさのひとつの原因になっているということであります。 |
| これが人口構成の変化をグラフで表しました。1980年と比べて現状では、高齢のところがかなり膨らんできています。一方、子どもところはグッと減ってきています。さらに、2025年になると、子どものところはますます少なくなって、この高齢者、特に後期高齢者のところがこちらと比較しても分かるように大幅に増えるようなこのような人口構造になるということでございます。 |
| ということで、平成19年と平成37年ということで比較をすると、平成19年では65歳以上の人口はおよそ20%であったものが、平成37年では30%くらいになります。特に、後期高齢者75歳以上については、10%が17%と倍近くまで増えると言うことです。全体の人口はここにあるように平成37年という段階では減少に向かっています。それに伴って医療費がどうなるかです。絶対額はさておき割合ですが、平成19年では65歳以上の医療費が約55%ですが、平成37年では全体の約70%が65歳以上の医療費で占められるようになるのではないかということです。特に、75歳以上の医療費だけでも5割を超えるという状況になるということが想定されるわけです。このような医療費の額と合わせて、このような分布も考慮してこれからの制度設計をしていかなければならないということでございます。 |
| 先ほどの話とのつながりですが、それぞれの医療費の伸び率を毎年グラフにプロットしたものです。老人医療費それから国民医療費、GDPの伸び率ということです。ここで下がっているのは、先ほども言いましたように介護保険制度が導入されたということです。これから見ても分かるように国民医療費の伸びはGDPの伸び率をずっと上回って来ておりまして、更に、老人医療費の伸びが大きいということを言っております。介護保険導入後も翌年からまた延びているということでございます。 |
| 現状に至る背景 その2 |
| この現状に至るその次は、世の中が随分情報化が進んだということではないかと言うことです。IT化もありますし、国際的な行き来もさかんになったということもありまして、国民の医療に対する知識、理解が深まったということも現状に対する認識に大変貢献しているのではないかということです。もう一つは景気の低迷、先ほど言ったことも含めて給与が低下をしたり、保険料がそれに合わせて下がってくるということもあります。また、景気が低迷すれば、当然国の税収も圧迫されるということです。それから5番目はよく批判されることですが、医療界における競争とか改革のインセンティブが足りないのではないか、このようなことが影響しているのではないかということです。 |
| これは賃金の動向で、ごく最近のところだけですが、平成14年、15年とわが国の賃金はマイナス2%、マイナス1%ということで下がってきております。 |
| 物価についても、ご承知のようにデフレで、この2年間で0.6%、0.4%と1%ほど下がってきている状況です。このような社会のデフレ、景気の低迷ということが、いろいろな形で医療の財政問題にかかわってきているということです。 |
| これはわが国の一般会計の構成を示しているわけですが、全体では歳出総額82兆円ありますが、よく見ると、国債費で17兆5千億円、地方交付税16兆円、合わせて40%強が国が直接政策的に使えるお金ではなくなっていて、残りの47兆円が国としていろいろな形で使えるということになります。この中に社会保障の財源も入っているということです。この用立てがどのようになっているかということですが、いわゆる租税及び印紙収入という通常の収入で賄われているのはおよそ半分41兆7千億円。45%程度がいわゆる公債金収入という国債等の発行によって調達するという、先ほどの国民負担率の点線のところですが、国の収入の半分近くを借金で賄っているという大変厳しい財政状況の中でこのようなものを出して、その中から社会保障費も出ているというそのような関係になっているということでございます。 |
| 何をしなければならないか |
| そのような状況下で医療、あるいは医療保険という中で何をしなければならないのかということについて整理をすると、ひとつは医療保険制度を見直すということだろうと思います。どのような観点かというというと、保険制度を安定、公平、良質・効率的な医療を提供できるようなそのような仕組みにするということです。具体的には国民皆保険という、ある意味ではわが国のユニークな仕組みだと思いますが、これを国として堅持をしていく。ここについてはおそらく大方の異論はないと思います。もう一つは、保険システムそのものを安定化させる。具体的には保険者の在り方を見直したり、負担と給付の関係をもう少し考え直していこうということです。それから、その次は情報提供を進めていく必要があるだろう。具体的にはインフォームドコンセントという言い方もしておりますがそのようなこと、あるいは医学的な情報をもっと提供する仕組み、このような方法を含めて進めていくということです。 |
| また、3番目として医療の質の向上ということで、施設、設備、人材というようなものについてそれぞれの資質向上が必要であろうということです。また、国民の健康の向上ということもやはり、大きなテーマではないかということです。まず、具体的には健康づくり・疾病予防ということから話を進めたいと思います。 |
| 医療制度改革で何をしようとしているのか-健康づくり・疾病予防- |
| このグラフは横軸が年齢、縦軸がかかる医療費ということです。これは非常に概念的な図なので、あまり細かく追求されると困りますが、イメージとして、人間はいろいろなリスクファクターを持っていて、それが加齢と共に蓄積、発現してきます。そして、ある域地を超えると、例えば、糖尿病が明らかになっていろいろな合併症や症状が出てくるというようなことを医療費を指標に表したというイメージです。この緑色は失った歯の数です。このグラフは大体医療費のデータに基づいて作られているのでそれほど違いはありませんが、65歳、特に75歳を超えるところくらいから医療費がグッと増えてきます。このような病気の発症もそのあたりから大幅に増えてくるということですので、この65歳を境に多くの会社では退職して退職者医療になったり、あるいは国民健康保険になったりするわけです。したがって、そのような部分の医療費がこれから大変になってくるという状況とも関連をしているわけです。したがって、この発症、重症化をいかに抑えるか、あるいは後ろにずらしていくかということが、これからのこのような部分で重要な課題になってくるだろうということです。 |
| これは、先ほどの概念をもう少し具体的にそれぞれのテーマというか、項目ごとに書いたものですが、若いときは健康ですが、いろいろなストレスが加わって、一定の境界領域の時期を経て、肥満、高血圧とかデスカルテット(死の四重奏)と言われるようですが、いわゆる生活習慣病という形になります。さらに重症化していろいろな合併症、さらに重症な病気に進展する。さらには要介護状態にたどり着くというようなことを示しているわけです。これをこの段階でなんとか食い止める。あるいは食い止められないにしても後にずらす、発症を遅らせることがこれからの大変重要な課題ではないかと思います。 |
| そのような概念も含めて、平成14年8月、健康増進法というものが作られております。この基本的な考え方のところにあるように自らの健康の増進に努めるということと、国含めてそれぞれの団体関係者は協力しながらそれを推進していくということをうたっております。その間のいろいろな連携の施策等について規定をしているという法律でございます。 |
| それから、また、そのような健康づくり、保健事業はそれぞれ地域でやっている、職域でやっている、保険の立場での話で国保とか被用者保険と書いてありますが、そのようなものをより一層進めるということ、それから、まさしく市町村等の地域における保険事業、それから介護の立場からのいろいろな介護予防とかサービス、このようなものとの連携をしていくということで、後期高齢者に対する保険的なサービスをQOLをより重視するという形で進めていくという考え方です。 |
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