「医療の現状と課題」
−財団法人医療研修推進財団  第9回講演会より−
厚生労働省医政局長

松谷 有希雄


 御紹介いただきました厚生労働省の医政局長の松谷でございます。「医療の現状と課題」について、これから1時間ほどお話を申し上げたいと思います。今、外交の話で、文化、文明の高所からのお話をお伺いしたところでございますけれども、私の方はもう少し卑近な、日々のテーマに近いところのお話を申し上げます。
 医療研修推進財団をお支えいただいている方々がお集まりと伺っております。医療研修推進財団は医政局の所管の団体でございまして、私はまだ10年にはなりませんが、医事課長をしたことがございまして、そのときにちょうど今のお医者さんは臨床研修を必修で行うようになりましたけれども、それに対する議論の過程で大変いろいろお世話になっております。医療研修推進財団では、今の臨床研修を行うに当たっての臨床研修病院のいろいろなプログラム、あるいは集まり、お互いを高め合うこと、そして実際に臨床研修病院を選ぶときのマッチングの仕事の事務局などもなさっていらっしゃるわけでございます。そういうこともございまして、医療の現状について御報告を申し上げたいと思います。

 医療の話を医療費の話からするのはちょっと不謹慎なのではありますけれども、医療の提供とそれを支えるお金とは切っても切り離せないということで、最初にこの話を申し上げておきたいと思います。本日の話全体は医療費の関係から医療制度の改革、昨年ちょうど医療制度改革が通常国会で審議されて法案が成立したわけですけれども、そこに至る経緯、中身についてのお話で、その後に今の医療界での課題となっております、お医者さんが不足しているといったようなことについての状況、最後に医療研修推進財団でいろいろお世話になっております臨床研修が現状はどうなっているかということ、大体その3つについて今日お話をしようと思っております。
 医療費につきましてはここにございますように、我が国では国民医療費すなわち、保険診療がもう完全に普及をして、当たり前になってございますけれども、それだけではなくて、自由診療の部分、あるいは分娩その他、いろいろなものを含めた全体の医療費で30兆円を超えている状況にございます。
 そのうちお年寄りの医療費は、かつては4分の1ぐらいだったのですけれども、今や3割を超え、3分の1も超えている。いずれこれは半分になるだろうと言われているわけでございまして、医療費はかつては毎年1兆円ずつ伸びるといわれていたけれども、最近はいろいろな制度改革がございまして、平成12年は病床の一部が、介護へ移ったということがあって減りました。それから、14年は御存じのとおり3割負担等の制度改革、マイナスの改定があったというようなことで、ここら辺の伸びが若干落ち着いてきていますけれども、それらの制度改革を踏まえた形での伸びということになっております。ただし、少子高齢化が続いておりますので、特に老人医療費を中心に増高要因は続いておりまして、この医療費を私どもがどのように負担をしていくかということは常に課題なわけです。
 国民皆保険で当たり前になったわけですけれども、その当たり前の制度を今後とも維持しようということについて、このまま放置していたのでは医療費の増高圧力からなかなかその維持が難しいということが予想されておりまして、制度の改変を加えながら皆保険の制度を維持しようというのが今の考え方でございますし、皆保険を維持するということについては国民のほとんどの方のコンセンサスがあるという状況でございます。
 さて、医療費の増加の要因は、今申し上げましたようにお年寄りの医療費の増加が大部分でありますが、それを分類しますと、入院と外来ということになります。入院の方は、平均在院日数、入院期間が長い。これは病床数が多いということと表裏一体でございます。それから、外来の方につきましては、今話題のメタボリックシンドロームを中心とする生活習慣病といったようなものでの外来受診者の受診行動に関する面が非常に大きいということでございまして、これは裏を返すと、入院については在宅の療養率の低さ、外来については生活習慣病、メタボリックシンドロームの患者さんや予備軍の増加ということが課題になっているわけでございます。
 それらに対する取り組みとして、入院については何とか入院期間の短縮を図ることで、入院から急性期、回復期、療養期を経て在宅へ進むような流れをスムースにすることによって効率化を図っていこうということでございまして、このためには介護保険の体制との連携も必要でございます。一方、外来医療費については、生活習慣病の対策が最も根本的な問題、一番大きな課題で、そのための健康づくり、保健指導といったようなことに着手をする。そういう考え方の下に改革が行われているわけであります。
   
   
   
     
 今申し上げた医療費と病床数との関係は、県別に見ますと概ね相関の傾向が見てとれると思いますけれども、人口10万当たりの病床数が多いところは医療費も高くなっている。当たり前ですけれども、病床数が多ければ、病床を有効に使うとなると、一定の割合で利用されますから、そこでの医療費が高くなるということになるわけです。病床数が多いと、どうしても入院期間が長くなるということがあるわけであります。それがこれでございまして、平均在院日数と1人当たりの医療費も表裏一体でございますので、同じ傾向にあります。長野県はここら辺にありますし、高知県がこちらにある。こういう状況にございます。これが入院の問題で、解決の方向はこのグループをこちらのグループの方に何とか持っていくことができないかということであります。
 外来につきましては、先ほど触れましたように、生活習慣病の医療費が医療費ベースで言うと大体3分の1を占めているということになります。死亡で言うと、半分を超して3分の2近くを占めているということになるわけです。もっとも、メタボリックシンドロームに関係するところは、がんを除きますので、死亡原因ということでは、こういったようなところになります。がんは死亡原因の相当大きな部分を占めますけれども、ある一定期間の間に亡くなることが多いというようなこともあって、お金から言うと、むしろ治療期間の長い高血圧疾患であるとか、糖尿病、あるいは脳血管疾患といったようなものが相当大きな部分を占めていることがわかると思います。
 さて、今申し上げたような医療費を背景といたしまして、医療制度の改革が昨年行われたわけであります。制度の改革は、医療に限らず、社会保障制度全般について常に見直しが行われています。御存じのとおり、年金の改革、今年もまた年金の一元化法案が出ますけれども、一昨年のそのまた前、3年前に年金の国会がございまして、相当大きな議論があって、社会保険庁はけしからんなどと言われ、いよいよ社会保険庁の解体の法案が今回出るようですけれども、そういうところまでの大議論があったのは御存じのとおりでございます。そういう議論を経て、年金の改革は相当程度進んだわけであります。
 また、一昨年には介護保険の見直し、あるいは障害者の自立支援法といったような障害者福祉の施策の抜本的な改正が行われた。これも相当大議論がございまして、その改革が進められたわけです。
 昨年は、医療の分野について、社会保障の中での医療の改革が行われました。医療の改革は勿論これだけではなくて、前回はたしか平成14年でございますけれども、被保険者本人の一部負担の割合を3割にするといった内容で、大議論があったのを覚えていらっしゃると思いますけれども、その改革以来の改革ということになります。数年おきに常に見直しが行われているという状況にございます。
 ちなみに、今年の国会は何があるかというと、御存じのとおり、ホワイトカラーエグゼンプションの話がございますけれども、労働保険の関係、あるいは労働基準法の関係の改革が予定されております。
 さて、昨年の医療制度改革ですけれども、一昨年末に政府与党で医療制度改革大綱という大枠がまとめられまして、その考え方をこちらに載せてございます。それに沿って法案がつくられたというところが特徴的でございまして、その大綱の考え方は柱が3つございますが、1つが安心・信頼の医療の確保と予防の重視、それから医療費の適正化の総合的な推進、そして超高齢化社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現ということになってございます。
 下から申しますと、超高齢化社会を展望した新しい保険制度体系は、平成14年の前回の医療制度改革のときの宿題になっていたものでございます。14年以前からの医療保険制度の抜本的な見直し、抜本改革ということが当時スローガンのように言われておりましたけれども、その行き着く先でございまして、そのときの約束の1つが高齢者医療制度を新たにきちんとつくり直すのだということです。今の老人医療は、老人保健法に基づく各保険者の共同事業としての高齢者の医療制度ですけれども、そうではなくて、高齢者を保険として独立させるようなことも含めた議論をしようということが約束にある。
 もう一つは、保険者がいろいろありますけれども、これらを都道府県単位に再編・統合の方向で進めていこうということが宿題になってございます。このほかに、診療報酬体系の見直しがあるのですけれども、その3つが約束で、それを果たすということでございます。その中身はこちらにございます。
 それから、先ほどの医療費について適正化を常にしていかなければならない。この議論についてもいろいろございましたけれども、そもそも経済の伸びに合わせてキャップをはめてしまえというような乱暴な議論等もございましたけれども、最終的に政府与党としての大綱は、中長期対策として適正化計画を県ごとにつくって、それに沿って先ほどの外来についての生活習慣病の予防をしていくといったようなこと。それから、これだけですと、翌年に効果はありませんので、短期的な対策も併せて行うということ。そして、一番大きな、ここに示してございますけれども、医療の確保と予防の重視ということで、予防のことが最初に出てきたことは今回の医療改革の特徴的なところだと思います。
 この医療提供のところにつきましては、医療法等の関係12法の改正の法案でございますし、生活習慣病の予防等につきましては、今回初めて、いわゆる公衆衛生としての市町村の仕事から保険者の義務としての予防が位置づけられまして、健康保険法の改正の中にこれが取り入れられ、勿論高齢者の医療制度、あるいは保険者の新しい再編・統合の話、それから適正化の話ということ等がこちらの健康保険法等の改正の中身になっているわけでございます。この法案が昨年議論されまして、6月に成立をしてございます。
   
 幾つかトピックを申し上げますと、まず宿題でございました高齢者医療制度につきましては、先ほど申しましたように、70歳以上の方について老人保健制度で、各保険者が共同事業として行う形になっていたのを、今回75歳以上の後期高齢者については独立の保険とすることとしてございます。そして、65歳から75歳の前期高齢者については、被用者保険と住民の保険である国保との間の負担の調整を行うことにしてございます。65歳を過ぎて退職者が非常に増えますと、被用者保険は楽になるし、国保の方が大変になるということですので、そこの間の費用調整を行うことが前期高齢者、そして後期高齢者についてはもう独立の保険としてこれを行うこととした訳です。
 その財源構成がここにございますけれども、半分公費を投入いたします。そして、保険料が1割。当たり前ですけれども、75歳以上の方から集まる保険料には限りがございますので、1割程度にしかならない。残りの4割はそれぞれの保険者から、若い人からの支援による。こういう大枠の仕組みとしてございます。これの保険者につきましては、市町村が都道府県単位にまとまりまして、その実施主体となることといたしてございます。
   
 もう一つの宿題でございます、都道府県を単位とする保険者の再編・統合でございますけれども、この考え方は御存じのとおり、医療については都道府県単位で医療の供給もファイナンスもやっていこうという基本的な思想があるわけであります。年金は国全体として一様に行うべき所得保障でございますが、これについては国が主体となって運営していくということといたしております。社会保険庁の組織が今度変わりますけれども、いずれにしても、変わった後についても国が主体となって年金という制度を運営していくことに変わりはないわけであります。一方、社会福祉、福祉の制度、介護の制度といったようなことについては、住民に身近な自治体でございます市町村を実施主体として組み上げられる形になってございます。
 医療につきましては、基本的には地域性のあるものでございますけれども、市町村単位では非常に狭いものがございます。専門性がございまして、市町村単位では医療の完結はなかなか難しいということから、医療法では前々から、病院の開設許可等、あるいは医療計画の策定等、医療監視の実施等、すべて都道府県知事の権限となっているわけでございます。
 ただし、ファイナンスについては御存じのとおり、国民健康保険は市町村ですし、政管健保は社会保険庁で国一本でやって、健保組合はそれぞれの企業単位で結成されているというようなことで、必ずしも都道府県単位とはなっておらず、ファイナンスの方はばらばらです。これは歴史的な経緯でそうなっているということでございまして、これを市町村の国保についてもできるだけ平準化を図っていこうとしております。
 それから、政管健保は、今回の社会保険庁の解体に伴いまして、国とは切り離して、公法人を保険者として設立して、その財政運営については都道府県単位にしていくことといたしてございます。健保組合についても、都道府県ごとの地域型の健保組合の設立を認めるというような方向で、大きくは都道府県単位の方向に持っていく第一歩が踏み出されたということになります。これによって、医療については都道府県単位の仕組みということが、ファイナンスの面でも少し整理されつつあるということになります。
 保険の方はそうですけれども、医療提供の方は、先ほどの絵で言いますと上の方でございますが、この関係は6つほどの柱がその中身でございます。これらについては、ここにございますように、今年の4月1日から大部分施行ということで、今施行に向けて最後の準備をしているところであります。
   
 まず、1つ目の柱が情報提供の推進ということでございまして、これは前回の医療法の改正でも進められてございますけれども、今回も大幅に見直されてございます。1つは、ここにございます広告規制。医療法で、病院その他が広告できることが決められてございますけれども、これを項目ごとに包括的な形で拡大をして、相当大幅な見直しが行われてございます。
 広告の見直しについては、そういった限定列挙ではなくて、基本的に自由にして、これとこれだけは広告してはいけないというネガティブリストにすべきではないかという議論もございましたけれども、さすがにそこまでは最終的にはいきませんで、審議会の段階で、ポジティブリストの形式で最大限拡大をしようということで、相当の包括方式になってございます。
 今回の最大の特徴は、広告規制の緩和だけではなくて、そもそも一定の情報については都道府県に情報を出していただく。都道府県はその情報を集約して、都道府県のホームページ等を使って住民がアクセスすれば情報が得られる。その地域での医療について、一定のものについては、住民ないしはその地域のお医者さんが、都道府県の方からその地域の医療の情報を得られるということを制度化したところが一番大きな改正点でございます。
 それから、2つ目の柱は医療計画制度の見直しでございまして、医療計画制度は御存じのとおり昭和60年に医療法の大きな改正があって、第1次と言われておりますけれども、今回はそういう数え方をすると第5次になるのですが、そのときに入れられた制度でございまして、都道府県知事が、特に入院医療の単位としての二次医療圏を設定いたしまして、県内を幾つかの二次医療圏に分けて、そこでの基準病床数、当時は必要病床数と言っておりましたけれども、それを設定して、それに沿って病床の足りないところは整備をするし、多いところはもうつくらないようにという勧告ができるといったようなことを中心とした医療の制度、勿論それ以外のいろいろなことも含めての計画が、5年ごとに審議会の議を経て都道府県で知事が策定をするという制度であります。今申し上げた二次医療圏の病床の規制という機能を中心に組み立てられていたわけですけれども、それに加えて、今回はそういうハードの規制だけではなくて、ソフトのものとしてきちんと本来の計画としての機能を発揮してもらうということで、脳卒中とか、がんとか、小児医療とか、4疾病5事業と言っていますが、勿論都道府県知事が必要と思うことについても設定できるのでありますが、そういったものについて事業ごとにその地域での具体的な連携体制について医療計画の中で明記をして、それは地域の方が見ることができるようにする。そのときの連携の仕組みとしての地域のクリティカルパスといったようなものを使って、これをやっていこうということでございます。医療計画には目標等も明示をして、きちんと事後評価をして、5年ごとに見直しをするたびによりよいものになってくるようにしようということでございます。
 3つ目の改革は、医師不足の対応でございます。対応はいろいろな面から行われなければなりませんが、関係の省庁が集まって、一昨年、医師確保の総合対策が出されてございますけれども、その中で法改正が必要なものについての対応、都道府県に医療対策協議会を設けること、あるいはそれへの協力の義務といったようことを法改正の中で行ってございます。
   
 それから、医療安全への対応。都道府県に医療安全のための仕組みがございますけれども、医療安全支援センターという名称にしてございますが、これを制度化する、その他でございます。
 それから、医療従事者の資質の向上はここにございますけれども、医師法、歯科医師法その他で罰金以上の刑に処せられた方、あるいは不正請求をしたような方について行政処分が行われますが、そういう方について、業に復帰するに当たって再教育をしよう、それを義務化する。また、それに伴って行政処分の類型の見直し等が行われてございます。
 6つ目には、これも大きな柱ですけれども、医療法人制度の改革で、見直しを行ってございます。医療法人の制度は、医療法の中でほぼ初期から医療を提供する主体たる法人の制度として設けられてございますけれども、特に非営利性の徹底という面から今回改正が行われてございます。社団の医療法人の場合には、毎年の配当はないのですけれども、最終的にその医療法人を解散するときにはその資産を出資者に戻すことができるという解釈になってございました。それでは、医療の非営利性の考え方と必ずしも相入れないのではないかという議論の下に、今回はそういうことではなくて、残余財産については、出資した額までは戻しますけれども、それを超えるものについては、国・地方公共団体あるいは類似の法人に帰属させることを原則とする改正が行われてございます。
 併せて、従前、へき地とか、小児救急とか、非採算等であって公的病院が担ってきた医療の類型について、医療計画で位置づけられたものについて社会医療法人という新しい類型を設けまして、そこで民間でも担っていただくことができるようにしようという改正も行われてございます。
 そのほか、有床診療所。20床以上を病院と言っていますけれども、20床未満19床以下の有床診療所についての見直しが行われております。
   
 今申し上げたことを詳しくしたものがその次からの資料でございまして、医療情報の点は、先ほど申しましたように都道府県を介して住民が一定の情報を得ることができるようにしたということでございます。それから、医療計画については、連携が切れ目のない形で行われるということで、その中で手段として地域連携クリティカルパスも使っていく。ただのクリティカルパスは院内での入院から退院までのプロセスと情報を共有して、そして標準化したものでございますが、これを地域で各医療機関同士の間での連携に拡大した手法でございます。別にこれに限らないのですけれども、いろいろな手法で地域での連携を進めていこうということでございます。例えば、がん診療の場合でのイメージ、脳卒中の場合でのイメージ、小児救急の場合のイメージということでございます。
 
 
 
 それから、医療対策協議会。先ほど申しましたように、医師確保の中でございましたけれども、大学も含めまして、法定された方、その他いろいろな方が入っていただいて、具体的に機能をしていただこうということにいたしてございます。それから、医療安全について、支援センターの位置づけその他でございます。
   
 また、今後の課題といたしまして、1つは異常死体について医師法21条で24時間以内に所轄警察に届け出るということになってございますけれども、これはもう明治時代からある規定で、本来他殺死体等がすぐに捜査に入れるようにということがその趣旨なわけですけれども、最近それが非常に拡大してございまして、医療に関連する死亡でも業務上過失致死の疑いがあるものについては届け出ろという運用がされて、それが平成16年の最高裁判決で、憲法38条にも違反していないとの解釈も出まして、今の運用でいいのかという議論が行われているところでございます。
   
 これについては、死因の究明についてもう少し第三者的な仕組みができないかというような議論が今行われようとしているところでございます。各学会が危機感を持って、共同声明を出したりしております。今モデル事業を省としても内科学会の協力を得て行っていますが、年度内には省としての制度の試案を出して、年度が明けまして4月以降、死因究明制度の検討会をスタートさせたいと思っております。
 
 それから、資質の向上の関係は、再教育の制度その他でございます。また、医療法人の制度は、先ほど申しましたように、新しい社会医療法人の制度をつくる、それから非営利性の徹底をするといったことがその内容でございます。これは、特に社会医療法人についてはそれなりのメリットもなければなりませんので、公募債が発行できるとか、税制上の優遇措置について、来年度の公益法人全体の見直しで、その税制の議論が行われる中でこれも議論していただくことになってございます。
 有床診療所の見直しの関係でございます。従前48時間以内の入院が原則でございましたけれども、それを撤廃いたしました。その代わり、病床数を今までは基準病床にカウントしなかったのですけれども、カウントをしましょうということになってございます。


   
 
 次に、医師確保の関係でございますが、医師の偏在が大変課題になっております。現状を言いますと、お医者さんは、医学部を卒業する人は7,500人から8,000人いるのですけれども、リタイヤする人もいますので、差し引きして実増3,500から4,000というようなところでございます。したがって、マクロで減っているという状況では勿論ない。毎年どんどん増えております。ここに書いてございますが、都道府県別に見ましても、減っている県はございません。どの県も増えている。よく、東京、大阪に行ってしまって、うちの県はいなくなってしまったと言われることがあるのですけれども、事実としてそういうことはありません。どの県もお医者さんは増えているということです。
 ただ、地域間の偏在は非常にございまして、県別に見てもこのように倍近い差がございます。全国比で対10万で211人いますけれども、多いところは280、少ないところは130。埼玉は東京におんぶしているところもありますが、北東北とか、そういうところはかなり少ないところがあります。
 後ほど資料が出てまいりますけれども、もっと問題なのは県内格差です。県内での二次医療圏ごとに見ますと、県別に見ると2倍の差ですけれども、3倍、4倍の差がある県がございます。したがって、県内での偏在をどのように是正していくかということは大きな課題になると思います。
   
 それから、診療科の問題がございます。特に、小児科、産科、勿論麻酔科とか、外科とか、これは言い出すと、うちも足りないという議論が始まるのですけれども、特に社会的には小児科、産科の問題。特に産科の問題は大変大事だと、私どもは思っております。
   
 背景としては、1つは広く薄い配置によって勤務環境が厳しい。特に、病院の勤務医の勤務環境は大変である。これは今に始まった話ではないのですけれども、医療が大変高度化いたしまして、その一方で患者さんの要求水準は非常に高くなっているというようなことがその背景にございまして、病院勤務医が疲弊をしているということは事実でございまして、これは何とかしなければならない。資源の配置等についても見直す必要があるのではないかというような議論も出ているわけでございます。
 それを背景に、病院勤務医の開業志向。虎ノ門の小松先生は「立ち去り型サボタージュ」とおっしゃっているのですけれども、志向は確かにそういうところはあると思うのですけれども、事実として見ますと、本当に開業が増えているのかなということで調べましたが、どうも開業が増えているわけではないようです。少なくとも16年までのデータではそうなので、18年までの直近まで調べなければならないと思いまして、それも別のデータをいろいろひっくり返しましたけれども、どれを見ても、開業が急に今雪崩を打っているということはありません。開業の数は増えています。ただし、お医者さん全体が増えていますから、開業適齢期に来る方が増えていますので、開業する率というのは変わらない状況です。ですから、志向があることは事実だと思いますが、事実として開業が雪崩を打っているという状況ではないようであります。
 それから、臨床研修の必修化、大学の法人化といったようなことで、大学の医局がかつてのようにお医者さんを抱えていないということから、今までいろいろな病院にお医者さんを派遣していたのですけれども、その機能が落ちてきたため、大学からの派遣に頼っていた病院がたちどころに困ったということでございます。先ほども申しましたように、県内でお医者さんは増えていますから、当然医者を増やしている病院もあるのですけれども、大学の医局の人事に頼っていたところはたちどころに困っている。これが今一番短期的に非常に困っているところであります。
 あと、大きな背景として、女性医師が増えています。特に産科などでは新人の7割が女性という状況でございます。小児科でも5割近く女性ということですので、女医さんの働く環境が大事です。これは女性の労働一般とも関係しますけれども、特にお医者さんの場合は24時間いろいろ働きますので、これを支える仕組みが必要である。それから、産科についても、産科に限りませんけれども、訴訟の増加、あるいは受療される側の要求水準の高まりといったようなことも大きな課題であります。
 今申し上げましたように、お医者さんは、特に一県一医大ができてから増え方のカーブが大きくなっております。地域別に見ると西高東低で、西が多くて東の方が少ないという状況にございます。単に数だけではなくて、密度を見ても、これは100平方キロ当たりの医師の分布ですけれども、それがやはりこちらで薄いということになります。先ほどの数の少ないのと密度の少ないのと両方少ないところに星印をつけてございますが、こういうところについては本当に困っているということで、後ほど出てまいりますけれども、医科大学の定員増を暫定的に認めようということで、4大臣で昨年の夏に合意したところであります。
 
 小児科のお医者さんはこのように順調に増えております。子どもが減っていますから、子ども当たりで言うと、もっと増え方は大きいということでございます。
 
   
 産科のお医者さんは、実数は減っています。ただし、お産も減っていますので、対お産当たりで見ると横ばいという状況です。ただし、これは産科と産婦人科医を足したものですが、必ずしもお産をとっていない方もございますので、本当はお産をとっているところ当たりでもう少し詳しく見る必要がございます。
 先ほどの県別のグラフでございます。どの県も増えている。東京、大阪の増え方は全国の増え方よりも少ないので、東京、大阪に集まっているということではないということが言えると思います。勿論、もとの数が多いですから、実数は増えているのですけれども。先ほども申しましたように、県内の一番多い二次医療圏と少ない二次医療圏を調べてみましたけれども、その格差は県によっては相当にございます。宮城などは6.5倍ぐらいあったりしています。
 
 これらを含めて、先ほど申しましたように、文部科学省、あるいは総務省と連絡会議をもちまして、連携して医師確保の総合対策を打出してございます。一昨年の夏にまとめましたし、昨年の夏に更に新医師確保総合対策として、短期的な対応、長期的な対応、それぞれにわたった対応をまとめてございます。短期的な対応を問題の背景ごとに区分をして、それぞれ行ってございます。それから、長期的な対応としては、医学部卒業生の地元定着ということから、暫定的な定員増を認めようということでございます。自治医大についても同様のことを行っております。
   
 具体的に、医師派遣機能が、先ほど申しましたように、今まで大学から各地域の病院に派遣をされるというような形がお医者さんの世界では普通のやり方だったのですけれども、地域でお医者さんを集めている病院がございますので、例えばそういうところから、今は、派遣機能はないのですけれども、こういうところから派遣できるような仕組みができないものかというようなことも考えていかなければならない。
 この絵にかいたようになかなかいかないのは、医療の関係の方はよくわかるのですけれども、1つは、そのようなことをするのならうちから出さないとか、いろいろ人間関係がございますから、そう簡単にはいきませんし、それぞれ言い分が違いますからそんなに簡単に物事は進まないのでありますけれども、大きな方向としては、大学の医局だけではなく、大学が中心であることは依然として私は変わらないと思いますけれども、大学に協力できるような病院群といったものを県の中で、どこに若いお医者さんを集めているところがあるかをはっきりさせた上で、どういったことで地域医療を支えていくのか。今まで、ある意味では大学のいわばボランティアで地域医療は支えられてきているわけですが、そうではなくて、もう少し公的な関与の下に地域医療を支える仕組みをつくっていく必要があるということであります。 
 
 もう一つは、薄い配置に対して、拠点病院をつくって集約をしていくということでございます。勿論あらゆる機能を一つの拠点病院に集めるというわけではなくて、例えば小児科についてはここ、産科についてはここというように、小児科と産科はある程度くっついていないとまずいところもあるようですけれども、機能ごとにその地域での病院の役割をそれぞれ分散しながら分担をするという必要はあるかと思います。
 特に、産科等はお産は24時間ございますし、帝王切開をするとなれば、お医者さんはやはり2人は必要でありますから、産科のお医者さんが一人ずつですと、初期治療、通常の分娩しか対応できない。あるいは、一人であっては24時間対応できないということでありますけれども、集約化しますとある程度の高度のお産にも対応できるということになります。
 ただし、かかる方は不便になります。今までお隣でかかっていたのがここまで来なければならないということですから、患者さんの方のアクセスの問題、それからお産の場合などですと、どこで泊まるのかといったような、そういう対策をしていく必要があるということになります。勿論、検診等は近くで、外来機能は残すとか、いろいろ工夫をしてやっていくことが大切です。
 これも絵にかくと、そうかなということでありますが、実際はこの病院の設置主体は〇〇町であって、町長さんの公約でやっているのだから、とてもお産はこちらに任せるなどということはできない、こことここは仲が悪いとか、あるいは3年前に病院を新しくしたばかりで、その投資額は税金で出しているのだからそれを回収しなければならない、そんな診療機能の縮小などできないと、そういう議論がたちどころに起きまして、一つ一つを見れば簡単な話ではないのですけれども、大局的にはこういう方向で解決していく必要があるということであります。
   
 それから、産科と小児科では大分状況が違いまして、子どもの方は時間外、あるいは深夜とか、土日の休みの日などに病院に押しかけるということがございまして、小児科のお医者さんがその対応に追われて、昼間は勿論入院の患者さん、外来の患者さんを診ていますから、三十何時間ぶっ続けで診ていて、本当に倒れてしまいかねないというようなところがある。夜あるいは土日に来る患者さんのほとんどは実は軽症の方でありまして、入院に至る方は2%もないということでございますので、勿論来る方は軽症か重症かわかりませんから来るわけなので、まず前裁きとして、例えば電話での相談で済むものは電話の相談の体制をとってもらおうということで、今♯8000番をやっていますけれども、これを広報するとともに、携帯でも使えるようにする。今は固定しかできない。それから、やっていない県がありますので、全部やって頂くほか、深夜帯にもやってもらうとか、そういうことをお願いしてございます。
 更にその上で、地域のお医者さん、開業のお医者さん、内科も含めて当番チームを組んで、あるいは地域でセンターをつくっていただいて、小児の一次医療のところを担っていただくというようなことを併せて行って、病院の小児科のお医者さんを支援する体制を、小児科だけではないかもしれませんけれども、地域でつくっていく必要があるのではないかと思っております。
 更に言えば、本当はかかる側の問題もございまして、何でもかんでもいつでも自分の都合のいい時間にかかるというのは、お医者さんの使い方としては非常にもったいない。もう少しお医者さんを大事に使ってあげた方がいいのではないかということも、広い意味では言えるということですが、命にかかわることなのでそこの切り分けはなかなか難しいところでありますけれども、そういう総合的なかかる側の問題、それから相談で済むなら相談、開業の先生で一次のところは担っていただくというようなことによって、病院との分担で、病院のお医者さんの負担を軽減するということが大事であろうと思っております。
   
 それから、先ほどの法改正で医療対策協議会が各県で法定化されしましたけれども、集まってお茶を飲んでおしまいというのではなくて、本当に必要な対応、まず現状分析、どこにお医者さんがいるかを把握して、そこからどうやって動員できるかを含めて議論をするということであります。
 動員の仕方につきましても、お医者さんはお金を出せば来るというものではありません。40、50になれば別かもしれませんけれども、特に20代の若いお医者さんはいかにして自分の腕を磨けるか、トレーニングできるかが最大のインセンティブでありますので、そういうお医者さんのキャリアアップにつながるような仕組みを提供する。ギブアンドテイクの仕組みを構築して、若いお医者さんに来てもらうような体制をとるということが大事であると思います。
   
 都道府県の医療対策協議会を支援するという意味も含め、中央会議を省に設けまして、先般開いたところでございます。これについては、全国的な組織のある団体に御参加をいただいております。
 
 集約の具体的な例として、これも相当苦労して大変だったようでありますけれども、北海道中空知での例、それから小児の救急センターについては大阪の例、これはセンターを運営して、そこで一次の患者さんを引き受けるという仕組みで、これは相当うまくいっているようでございます。それから、お医者さんの派遣では、長崎は離島等もあるので、かなり前からこういう仕組みをつくっていらっしゃるようですけれども、身分を保障してきちんと採用して、1年半勤めたら半年は有給で自主研修ができるといったような仕組みをとってやっていらっしゃいます。宮崎も同様の考え方で進めている。類似のことは、各県それぞれ努力されていらっしゃいます。
   
 それから、地域枠という形で、各県に必ず1つは医科大学がございますけれども、そこで地元出身の方を優先するといった政策も、徐々にではありますけれども、普及しているということでございます。勿論入学者の質の確保ということとの絡みがあって、なかなか簡単にはいかないところでありますけれども、また地域の中でも、特に同じ県の中でも必要なところがありますから、そこの町長さんが面接するというやり方をとっているところもあります。
 
 そういうことを含めて、来年度、この4月からの予算、間もなく予算委員会が始まりますけれども、そこでは医師確保の対策に、今年度は41億円ですけれども、補正と合わせて100億円の確保をしたところでございます。総務省の方にお願いをいたしまして、地財措置もしてございます。先ほどのいろいろな事業を都道府県で取組んでいただくものの地方負担分の裏負担をしていただいております。
  医師派遣については、先ほどの協議会の設置費、中央会議の設置費、それから実際それによって協力する病院があった場合の助成、それから地域でお医者さんを集めている、マグネットホスピタルと勝手に名前をつけていますけれども、磁石のようにお医者さんを引きつける病院が必ずございますので、そこをどのように活用するか。そこで研修が受けられる、あるいはそこから出す、2つの形があると思いますけれども、それぞれのやり方。いろいろなモデル事業についての支援。それから、奨学金、宿泊支援といったようなことですね。
 それから、開業医さんににつきましても、地域で参画していただく。だんだんビル診療所が増えて、昔のお医者さんとは違うような形態が増えていますけれども、今後、医師確保とは別に、在宅医療を実際に進めるに当たっては、開業医さんの役割はまた非常に大きなものになってくると思いますので、その強化ということ。それから、住民の啓発。♯8000番のことも含めまして行っていく。さらに、ネットワークの問題、拠点の問題等でございます。
 大事なのは、女性医師の問題。それから、助産師の活用も大切ですし、さっき申しませんでしたけれども、お産については助産師のグループと産科のお医者さんのグループが、歴史的な問題もあってしっくりいっていないところもあるのですけれども、そんなことを言っている状況ではないように思いますので、病院の助産師に加え、診療所にも大いに参画していただく、あるいは病院での助産師が正常産を取り上げるということがもっと多くなると、産科のお医者さんが助かるといったような仕組みが大変うまくいっている例もございますので、そういうことを普及していくことは非常に大事だと思っております。
 それから、不便になりますのでアクセスの問題。お医者さんを回すよりも、患者さんに来てもらうという方向で工夫しなければなりません。それから、医事紛争の関係で、補償制度等も今検討しているところでございます。それから、死因究明は先ほど申し上げました。


 

 最後に、時間が少なくなりましたが、医師の臨床研修につきましては、前回の医師法等の改正が平成12年末にございましたけれども、そのときに必修化が決まりまして、平成16年からお医者さんは2年間の臨床研修を必修にしてございます。それまでもお医者さんの研修は実際は9割以上行われていたのですけれども、それが制度上きちんと必修になって、アルバイトをしないでも済むようにして、幅広い視野から研修をしていただく仕組みができ上がったわけであります。
 その結果、大学病院は研修の場所ですけれども、そのほかに市中の病院で臨床研修の大臣が指定した病院がございます。必修は16年から始まりまして、18年にちょうど第1期生が終わったところで、この3月に出たのです。
 ただし、2年終わった後、今のお医者さんはみな専門医志向ですから、大体その後4年、5年と専門研修をするということでございまして、その間は病院にかじりついておりますから、ここから後、3年、4年、5年しますと、若いドクターが次々と出てまいります。4年、5年いたしますと、研修病院からお医者さんはあふれてくるということになりますので、長期的に、マクロで見ますと、お医者さんの目の前の飢餓感というのは4、5年のスパンでは若干緩くなるということは言えるとは思います。
   
 余計なことを言いましたけれども、研修の場は、必修前は、大学で大体4分の3ぐらい、7割5分近く行われて、残りの4分の1ぐらいが市中病院だったのですけれども、必修がスタートいたしまして、だんだん比率が今逆転をしてきておりまして、市中病院の方が半分以上になっている。大学病院がどうして人気がないのか、もう少し分析する必要があると思うのですけれども、大学病院も一所懸命努力されていますが、まだこの傾向が今年度も続いているということであります。
 機能別に見ても、必ずしも大きいところに集まっているわけではなくて、年とともに小さい病院にもたくさん研修医が行くようであります。先ほどの都道府県別のお医者さんの数ですけれども、研修医が医師の多いところに集まっているわけでもなくて、西高東低の逆で、薄い方にも集まっているということであります。
 満足度は市中病院の方が高いです。昨年もとっていますけれども、大体同じような傾向です。大学病院は症例の問題か、指導体制の問題か、短期的なデータの満足度なので、これだけではわかりませんけれども。それから、研修体制でベッド別、病床規模別に見ても、小さいところの方が満足度が高い。顔が見える指導体制だからということがあるのかもしれません。
 それから、終わった後の進路ですけれども、昨年の3月に必修化の第1期生が出たわけですけれども、市中病院で研修された方は市中病院に残る。大学病院で研修された方は大学病院に残る。その傾向は当たり前ですけれども、全体で見ると、さすがに大学に少し戻っております。研修では半分以下ですけれども、終わると半分強は大学に行っているという状況になっております。その理由は、今研修していること、専門医の取得、指導医といったようなところが大きな理由です。給料というのは必ずしも行く理由ではないですね。大都市も同様です。出身地は進む理由になっています。ですから、地元枠は意味があるということであります。
 科別に言うと、小児科、産科は志望者としてはそんなに減っているわけではございません。科別に見ると、科によって大学に残ることが多いところと少ないところとがございます。やはり大学でなければ研修できないような科のところは大学にたくさん残っているという状況でございます。
 時間が来ましたけれども、こういう施策を行うに当たっては、文部科学省との連携は非常に大事でございまして、かねてから連携体制をとってございますけれども、昨年からは人事交流も含めて協力体制をとっているという状況にございます。
 医療問題は、非常に大きなスケールから地域での個別の問題に至るまで、幅広いものでありますけれども、それを吸収した上で、国としての政策につなげるという努力を今致しているという状況でございます。
 以上で私の話を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。